精神分裂病と栄養療法/『ビタミンB-3の効果』

 

エイブラム・ホッファー著●大沢 博訳
定価2,500円+税●4/6判 並製200頁


訳者まえがき
本書は、カナダの精神医学者エイブラム・ホッファー博士の著"VitaminB-3 and Schizophrenia: Discovery, Recovery, Controversy" (Quarry Press, 1998)の全訳である。

ホッファー博士は、分子整合精神医学のパイオニアとして世界的に有名な医学者である。カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドで精力的に活動してきた。カナダのサスカチェワンで精神医学研究所の役員や、サスカチェワン大学で精神医学の教授を歴任。現在はカナダ分裂病研究財団の会長を務め、また学術雑誌"Journal of Orhomolecular Medicine"の編集長である。

私は1997年10月、ニューヨークのウォルドルフ−アストリアホテルでの、「KYBクラブ・シンポジウム−イン−ニューヨーク」に招かれた際、主催者の分子栄養学研究所長・(株)ケンビファミリー社長金子雅俊氏のご紹介で、ホッファー博士にお会いした。

ホッファー博士は、このシンポジウムのゲストスピーカーの一人で、「分子整合医学の発展」という題で講演を行った。

私がこの本に出会ったのは、柿谷正期氏のおかげである。柿谷氏は日本における現実療法の第一人者であるが、栄養療法にも造詣が深く、すでに分裂病をはじめ、精神疾患の患者に栄養療法を含む援助を実践し、大きな成果をあげている。本書に登場するHODテスト(ホッファー−オズモンド診断テスト)を訳し、日本語版((株)アチーブメント発行)を作ったのが柿谷氏である。

1998年の秋に柿谷氏から、ホッファー博士の研究の最近の一連の出版物を知らされて、氏から本書を入手、早速読み始めた。読むほどにホッファーの研究業績の偉大さが感じられ、それと同時になぜこれほどの研究が、学会で無視され、迫害ともいえる仕打ちを受けてきたのか、強く印象づけられた。

私が知るかぎりでは、日本の精神医学では今日でも栄養療法が全く無視されている。かなりの数の精神医学の書をみたが、一つとして栄養療法をとりあげているものはなかった。

雑誌『こころの科学』(2000年3月)は、特別企画が「分裂病治療の現在」であった。記事の中に、精神科主任教授五十人へのアンケートの結果があった。問いは、分裂病の成因として何が重要か、治療に何が最も必要かなどであった。しかし回答者の誰一人として、栄養に言及している人はいなかった。主任教授といわれる人たちの頭の中に、栄養というパラダイムがなければ、仮に若い研究者が分裂病と栄養の関係に関心をもっても、一笑に付されてしまうのではないか。それよりも、そのような関心を教授の前で表現できるだろうか、と疑いたくなる。

私は、ホッファーの研究に関心をもち、理解する努力を続けながら、連載執筆を依頼されている二つの月刊誌『予防医学ニュース』(杏林予防医学研究所)と『健康ファミリー』(文理書院)に、分裂病の栄養療法のことも書いてきた。家族に分裂病あるいはその疑いの患者を抱える方がそれを読んで、相談を求めてくることも多くなった。

たとえばある母親は次のような手紙をよこした。23歳の息子は高校三年生の頃から分裂病らしいと診断を受け、薬をのみ続けてきたが、一向に改善されず、恐怖心、妄想としか思えない思い込みの強さ、関節痛などが続いていた。しかしナイアシンなどを毎日のむようになり、一カ月ほどで、それらの症状がものの見事に消え失せ、今はとても明るく笑うようにもなり、一筋の光明が見えはじめた。毎日とらせたビタミンなどは次の通りであった。ナイアシンアミド4.5g、ビタミンBコンプレックス、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、コンドロイチン。

分裂病についてのホッファーらのアドレノクロム説は、今村光一氏によって早くから伝えられていた。たとえば著書『アメリカ上院栄養問題特別委員会レポート−いまの食生活では早死にする』(経済界昭和63年)で、「”麻薬”になることもある砂糖のこわさ」という見出しを掲げ次のように述べていた。

「砂糖はさらにもう一つの意味でも麻薬になっているのは確実と見ていい。それは低血糖症→アドレナリンの過剰分泌→麻薬という経路を通じてである。砂糖は血糖の乱高下を起こして低血糖状態も起こす。すると体は低血糖状態からくるエネルギー・ショックに対処するためにアドレナリンというホルモンを分泌させて血糖レベルを正常レベルに引き上げようとする。ところがこのアドレナリンが体内で分解されてできるアドレノクロムという物質は、実は麻薬メスカリンの中の薬効成分(つまり麻薬成分)と同じ物質なのだ。そしてアドレノクロムが精神分裂症の原因物質だというのは、精神分裂症の原因に関する説のうちでも有力な説になっているものなのだ。」

ここにあげられた分裂病のアドレノクロム説こそ、ホッファーとオズモンド両博士が提出した説である。それがどんなものかは、この本の中で詳しく説明されている。

分裂病患者への栄養療法を研究し、多くの患者を助けてきた精神医学者としては、分子整合精神医学のリーダーであるマイケル・レッサー博士、故人となったカール・ファイファー博士がいる。私はこの二人の著書を訳した。レッサー著『栄養・ビタミン療法』(ブレーン出版1991年)とファイファーら著『精神疾患と栄養』(同1999年)である。

これらに加えて、ホッファーの「分裂病」をタイトルにしたこの本の日本語版を出版できるようになったことは、大きな喜びである。苦悩を続けている患者と家族、そして治療に悪戦苦闘している医師たちに、この本が大きく役立つに違いない。

内容
序論
分裂病治療の歴史/分子整合精神医学/医学界の無視/分裂病患者に新しい希望
発見
五十年前の分裂病/オズモンド−スマイシーズ仮説/ビタミンB-3(ナイアシンとナイアシンアミド)/ビタミンB-3のパイロット・スタディ/最初の二重盲検研究/臨床研究/プロジェクト120/追跡研究/慢性患者/退院後の結果/ノースバトルフォード単独研究/分裂病と自殺
回復
診断/ホッファー−オズモンド診断(HOD)テスト/クリプトピロルリア(藤色因子)テスト/分裂病症候群/脳アレルギー/ビタミン欠乏/ビタミンB-3依存症/ミネラル欠乏/ミネラル毒/幻覚誘発剤/治療/食事/ビタミン・サプリメント/ミネラル・サプリメント/アミノ酸サプリメント/必須脂肪酸(EFA)/電気けいれん療法(ECT)/薬/精神医学療法/ビタミンB-3と精神障害児
論争
学説の政治力学/アメリカ精神医学会/医療体制/新しい医学パラダイム
付録1
HODテスト質問表
付録2
尿中クリプトピロール(KP)の測定/サプリメント入手情報


略歴
著者:エイブラム・ホッファー Abram Hoffer
精神医学者、カナダ分裂病研究財団理事長
Journal of Orthomolecular Medicine (国際分子整合医学会雑誌の編集長)
著書:Puttin It All Together:The New Orthomolecular Nutrition

訳者:大沢 博
昭和3年群馬県生まれ。昭和27年東京文理大卒。 昭和31年〜平成6年 岩手大学に勤務。平成6年岩手大学名誉教授。
著書:『食原性症候群』(ブレーン出版、昭和61年)、『食原性低血糖症』(同、平成10年)、『子どもも大人もなぜキレる』(同、平成10年)、『その食事では悪くなる』(三五館、平成11年)ほか
訳書:シャウス著『栄養と犯罪行動』(ブレーン出版、平成1年)、レッサー著『栄養・ビタミン療法』(同、平成3年)、エイローラ著『低血糖症』(同、平成8年)、ファイファー著『精神疾患と栄養』(同、平成11年)、ホルフォード著『メンタルヘルスと栄養』(同、平成11年)、ジャンソン著『ビタミン革命』(オフィス今村、平成11年)ほか

 
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