診療室から 最終回 ドライアイと流涙
涙は目の大切な栄養です 大切につきあいましょう
私達の目の角膜は透明の涙で覆われ
その分泌の多さで様々な症状が出る


 私達の目の角膜は、透明のなみだ(涙)で覆われていますが、その分泌が多いか少ないかで様々な症状が出ます。そこで最終回は「ドライアイと流涙」についてです。
 涙は@乾きを抑える表面の油の層。A中間の水の層。B底の角膜を保護するムチン粘液(昆布のヌメリ様)の三層構造をしていて、厚さは約0・01ミリメートルです。
 涙は目の表面に栄養を与え、そして老廃物を受け取り、鼻側の小さな穴(涙点)から鼻の奥(涙道)に流れます。涙はまばたきの度に新しくなり、角膜は絶えず新しい涙で覆われて透明に保たれています。
 涙は目の外上方の骨の裏にある涙腺(るいせん)から水分・栄養分が分泌され、油分はまつげの内側にあるマイボームから、ムチンは角膜の表面で作られますが、この層が破壊されると、ドライアイなどの様々な症状が生じます。
 ドライアイは涙の分泌量が低下するか、乾燥すると生じます。症状は、乾燥感、まぶしさ、充血、違和感、見えにくい、曇った感じなどですが、症状が強くなると痛みが生じます。このような症状の、患者さんの角膜の表面を色素で染めてみると、点状に角膜上皮の障害があります。
 原因は、コンタクトの使用、コンピューター操作などです。唾(だ)液(えき)の減少などを伴う膠原病(こうげんびょう)の一種でも生じます。その他では、プチ整形で二重瞼(まぶた)にした人、疲れて深く寝ている時に薄目を開いている人に乾燥が亢進(こうしん)して起こります。また、市販点眼薬や治療用の点眼薬に含まれる防腐剤や安定剤で、治すつもりが悪化させている人もいます。
 コンタクトは角膜の涙液層に載せているので、栄養や酸素がいき渡りにくく、特に12時間以上装用していると栄養不足と低酸素のために角膜が弱まり、傷が生じやすくなります。
 カラーコンタクトには粗悪品が多く、レンズの裏の模様がザラザラしているために、短時間で傷がつきます。また、汚れたレンズや古いレンズを使用すると、滑りが悪く傷ができやすくなります。
 長年の使用者は、レンズの異物感に慣れて角膜知覚の低下や涙液分泌力の低下を生じ、コンタクトが擦(こす)れて傷ができやすくなります。予防としては、レンズの使用時間を減らすのが一番です。


ドライアイの対策は意識的な瞬きと
画面を見る際は見下ろすよう努める


 ドライアイはコンピューター使用者にも多く起こりますが、普段、私達は物をよく見ようとすると、目を見開き、目を凝らします。このため、瞬(まばた)きの回数が自然に減り乾燥しやすくなります。そのほか映画、テレビ(DVD)を真剣に見た後も乾燥感が強まります。
 対策は少しでも意識的に瞬くように努め、コンピューターの長時間操作には時々休憩を入れ、また画面を見る際は、視線を見上げるようにするより、見下ろすようにすれば瞼の上下の開く幅が減り乾燥感は軽減します。
 その他の生活環境としては、空調が大きな原因を占めているように思います。空調の強い2月と8月は悪化する患者さんが多く、梅雨時の6月頃は症状が楽になる人が多いからです。冬、乾いた冷たい空気をそのまま機械で暖めるビルでは、湿度が非常に下がっています。また、夏、暑い湿った空気を冷房・除湿するとやはり乾燥します。
 家庭でも空調が普及し、昔のように、やかんの載ったストーブで暖や冷風扇で涼を求めることが少なくなってきました。機械による空調で、室内の空気は清浄に保たれやすいですが乾燥しています。
 ドライアイ傾向がある人は、睡眠不足、過労、ストレス、コンタクト使用を避ける、空調の吹き出し口を避けて行動し、空調はゆるめにして加湿器の使用を薦めます。
 加湿器は、超音波式と加熱式がありますが、タンク内の雑菌、カビなどの問題を考えると、加熱式のほうが優れていると思います。しかし、幼児がいる家庭では熱い蒸気が出ますので配慮して下さい。また、濡(ぬ)れタオルなどを近くに置くことでも少しは軽減するでしょう。
 治療は涙の成分の点眼や角膜の保護剤、栄養剤の点眼が中心です。しかし最近は、外部から足すだけでなく、昆布のヌメリのようなムチンの産生を刺激、増加させる点眼薬が発売され、根本的な治療が進歩しました。
 また症状の激しい時は、眼科専用の軟膏(なんこう)を入れ眼帯をします。朝起きた時に乾く人は、寝る前にホルモン剤・抗生剤・防腐剤などの何も入っていない眼科用軟膏を米粒半分くらい、目の端にはさんで寝るのも乾燥が抑えられ有効です。
 目の充血、乾燥感とともに、近頃、食事が飲み込みにくくお茶がなければと感じる人は、内科・耳鼻科に行くことを勧めます。風邪薬やアレルギー薬の中にも、鼻炎の鼻水を抑えると同時に、涙の量が減る薬がありますので注意して下さい。


涙の量は、目の病気には治そうとして
ゴミが入ると、流そうとして多くなる


 次に流涙についてですが、赤ちゃんと大人では原因は異なります。涙の鼻への通り道(涙道)が詰まったり、角膜への刺激がある時に、涙はあふれます。涙の量が多い時としては、結膜炎・目の傷・眼精疲労(疲れ)・アレルギーなどの病気を治そうとして、逆まつげ・ゴミ(化粧品の粉など)が入っている時は流そうとして増えます。
 日常生活では寒い時に外に出ると涙が出ます。手先が寒さで青くなり肌はサブイボがたちますが、目は温めるために涙が多く出ます。そして年齢のため張りの減った鼻涙管(涙道)に流れきらずにあふれます。男性にもありますが、高齢の女性に数倍多いです。
 その原因としては、若い頃からの化粧の粉が瞬きで目に入り、長年の刺激で涙道が詰まっていくと私は考えています。若い人でも、まつげの内側まで化粧する人や水をはじく化粧品を使っている人に涙道狭窄(きょうさく)や流涙が見られます。
 また、涙の多い赤ちゃんは注意が必要です。お腹の中では涙道・涙点が閉じていることが多く、生後3ヵ月くらいで自然に開きます。その時期を過ぎてもウルウルが続き、よく結膜炎になる、目頭を押すと膿(うみ)が出る時は受診して下さい。
 私は抗菌剤の点眼を併用しながら、目頭の鼻側の骨の凹みの所を、眼球を押さえないように上から下にゆっくり10回ぐらい押す方法をお母さんに教えます。日に2〜3回すると治まることが多いです。
 続けても涙道が通らない場合は、ブジーという細い針金を目頭の涙点から通し、鼻涙管の開いていない膜を破ります。慣れた先生で生後6ヵ月くらいに治療してもらうのが良いでしょう。自然治癒するという報告もありますが、抑えてできるのは6〜7ヵ月までですので主治医とよく相談して下さい。
 流涙は原因疾患を治すのが大切ですが、涙道が細いか詰まっている時は、先の丸い細い柔らかい針金や内視鏡で徐々に涙道を拡げます。それでも無理な時は、鼻腔と新たな道を手術で作ります。
 涙は大切な栄養です。大切につきあいましょう。