診療室から Vol.59 色覚異常
私たちの見ている色は皆、同じ色でしょうか?
色覚異常には、先天性と後天性があり
40人クラスでは、ほぼ一人がいるほど


 私たちの見ている色は、本当に、皆、同じ色でしょうか?
 色覚は主観的なものであり、色をどのように感じているかは、本当のところは、本人以外は知る由もありません。電灯の下や蛍光灯はもちろんのこと、太陽光でも晴れや曇り、夕日の下などで異なる色に感じるという経験は、どなたにもあると思います。さらに、蛍光灯でも食品が美味(おい)しく見える……という蛍光灯などがあります。
 未就学児の色覚異常の例として、「ゲーム機などのLEDの色判別(赤・緑)が分からない」「お絵描きで顔を黄色や緑に塗った」「灰色の部分をピンクに塗った」「緑の犬(緑の犬はいないという概念がない)」などがあります。
 日常生活では「服の色を間違えた」「赤と黒のボールペンの字が区別しにくい」「尿路結石による血尿が分からなかった」など。また、仕事では不利益を感じるものとして、「農作物の選別」「刺身の鮮度」「しみ抜きのシミ」「広告、印刷、塗装関係」などです。
 光は、網膜にある視細胞によって感じます。この視細胞には、暗い所で働く杆体(かんたい)細胞と明るい所で働く錐体(すいたい)細胞があり、さらに錐体細胞には、3種類(赤・緑・青)を感じる細胞があります。この細胞への刺激によって私たちは無数の色を感じることができます。カラーテレビのブラウン管により作られる色と同じで、赤と緑で黄色、赤と緑と青で白の色を感じます。
 ところが、その3種類の細胞のバランスが異なるのが「色覚異常」です。先天性と後天性がありますが、先天性の種類は赤緑異常が主で、遺伝で発症することがほとんどだと知られています。また後天性は、ある種類の薬や目の病気(網膜症・視神経障害・緑内障など)によって起こり、青黄異常が主です。
 先天性色覚異常は、男性・5%(20人に1人)、女性・0・2%(500人に1人)の割合で起こり、決して珍しい症状ではありません。つまり、学校では、40人クラスにほぼ一人いることになります。
 日常生活にはほとんど不自由はありませんが、状況によっては色を見誤って(色誤認)、周囲から誤解を受けたりします。しかし、誰でも色の組み合わせや暗い所で見るとき、疲れているとき、急いでいるときなどに色誤認を起こします。
 色覚異常は型による違いや程度の差があり、色の見え方が異なります。本人に自覚がないこともあり、親や保護者も含めて、約4割の人は検査で指摘されるまでそのことに気が付かないといわれています。一般には小学3〜4年の頃に、色使いなどで気が付くこともあります。


色覚検査を受けてない世代の進学で
最近は多くの問題が報告されている


 色覚検査は、昭和33年に学校保健法によって小・中・高校の時に行なうように決まりました。しかし、平成13年に雇入時の健康診断で色覚検査も廃止され、学校での色覚検査は、平成14年から「差別の温床になる」との声を受け、強制ではなくなりました。実は平成14年に文科省から局長通達として、「在学中に希望者には色覚検査を行なうように」との指令が出ていますが、実際はほとんど実施されていません。
 以前は色覚異常に対し、必要以上の制限があり、入学・就職差別につながっていましたが、門戸は開かれた状態になりました。しかし、これは言葉を裏返せば、色覚に関しての問題は自己責任になります。
 一方では、航空、海技、鉄道、自衛隊、消防、警察、気象関連、フグ調理師、バスなどの乗り物関係の資格取得にあたっては、色覚の制限は残っています。海外では、フランスでは小学1年と6年、イギリスでは小学3年、中国、韓国は小学時期に検査を行なっています。アメリカは自己責任(親?)です。
 検査廃止から10年がたち、検査を受けていない世代が高校卒業の年度になり、最近は逆に進学・就職に多くの問題が報告され始めています。
 例えば看護学生が顔色・唇(くちびる)の色の変化の識別困難が理由で、現場は困難といわれる(現場以外は可)。警察学校の試験時に色覚異常を指摘される。自衛隊をめざしていたが断念した。工業高校や美容学校、デザイナーや美術をめざしていたが、入学試験時に知る(進路指導の問題)。気象大学をめざし試験直前で気付くなどです。
 しかし、あの「ヒマワリ」を描いたゴッホは色覚異常と知られています。また、小生の友人の外科医も、問題なく医療をしていますが、焼き肉がどこまで焼けているか判らず、私が焼きます。写真家の色覚異常の人は、自身の色基準値を自分で作っています。検査を受けてその程度を自覚し、不得意な部分はそれぞれで対応しています。
 検査を受けるとして、最近はネットでもたくさんのサイトがあります。学校では希望者に石原式学校用で検査します。また眼科で正確に測るには、石原色覚検査表、パネル15、東京医科大学式色覚検査表、新大熊表、標準色覚検査表(SPPT・U)、アノマロスコープ(大学病院)などを用いて検査を行ない、型とその程度の分類が可能です。


色覚のバリアフリー化をするために
色の組み合わせ、形などの工夫が必要


 では、色覚のバリアフリーは可能なのでしょうか? 山の緑や赤の花、緑の葉や野原の草、土などの自然の色は変えようがありません。しかし、色覚のバリアフリーについて、最近は数多くなされています。「カラーユ(*)ニバーサルデザイン」の推進活動が社会的には行なわれています。
 例えば、歩行者信号では「赤の中に立った人型」「青信号に歩く人型」、道路信号も「赤の中に×」が見える、電車の時刻表も「赤=■は特急」「黄色=▲は急行」「緑=○は快速」など、公共の案内や施設、文字の縁が白や黒で囲われた案内板などです。
 今後、私たちが色使いを考えることも必要だと思います。他の人に広く見てもらいたいものを作るとき、組み合わせの中で判別の難しい色を使わないようにしていくことも大切です。
 使い合わせの悪い色としては、
A:「赤と緑の系列」
@赤と緑A橙(だいだい)と黄緑B茶色と緑
B:「無色彩との系列」
@赤と黒Aピンクと白・灰色、B緑と灰色・黒
C:「青と赤の系列」
@ピンクと水色A青と紫
などです。この色使いを並べて使わず、間に別の色を縁取りに使うなどを配慮するといいと思います。また、青・黄・黒・白を基本として、前述の色の組み合わせを避けるように心がけましょう。
 色の情報以外には、明度や彩度、大きさ、模様、形などの色以外の情報を付加すると、色覚異常の人は大いに助かります。
 機会を見つけて、特に18歳以下の人は一度検査に行っておいたほうがよいと思います。