診療室から vol.57 人間の食性
そもそも、私たち人間は肉食動物なのでしょうか
食中毒は高温多湿の夏だけではなく
季節を問わず、1年中発生している


 蒸し暑く湿気の多い梅雨時の7月から残暑が厳しい9月にかけては、食中毒に注意しなければいけない時季です。しかし、食中毒はこの期間だけのものではなく、実は、季節を問わず1年中発生しています。食中毒を引き起こす原因は、大きく分けて「細菌」と「ウイルス」「自然毒」などがあります。
 2年ほど前の平成23年4月に、富山県の飲食チェーン店で発生した食中毒は細菌によるものです。ユッケを食べた人たちの集団食中毒事件(腸管出血性大腸炎による食中毒)は、気の毒なことに、亡くなった人も何人かいました。
 また、肉の生食を提供する店の牛レバーの内部から腸管出血性大腸菌O157が検出され、平成24年7月からは牛レバーの生食用としての販売、提供が禁止され、大きな話題となりました。ヨーロッパでも、同様の事件が社会問題となりました。
 ちなみに、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌(O157、O111など)などの細菌による食中毒は、5月から9月にかけての夏季に多く発生します。これは、細菌が高温多湿を好み、増殖が活発になるためです。
 そして、気温が低く空気が乾燥する冬は、細菌による食中毒は減りますが、一方、「ノロウイルス」などのウイルスによる食中毒が多くなります。
 また、キノコやフグなどに含まれている有害物質による自然毒の食中毒は、前出のものに比べて発生件数は多くありませんが、その時季になると毎年犠牲者が出ています。


子どもから大人までキレる現代社会
これも食生活が無関係とは言えない


 そもそも、私たち人間は、肉を食べる「肉食動物」なのでしょうか? 動物の血は、人間にとっては異分子です。それを体内に入れることで、私たちの血液は汚れ、ひいては、臓器を傷つけ、害になると考えたほうが良いでしょう。
 日本人は、明治以前にはほとんど肉を食べるという習慣はありませんでした。一部、猟を生(なり)業(わい)にしている人たちは、射止めた獲物を口にしてはいたでしょうが、それを、今の人たちのように、1週間に3日、4日と肉を食べるほどではなかったと思います。
 このように肉を多く食べることによって、それまでになかった新しい病気が増えてきております。
 さらに第二次世界大戦後、朝食には、ご飯と味噌汁が当たり前だった一般家庭にまで、欧米型のパンとミルクと卵料理という食生活がどんどん入り込み、ますます色々なアレルギー疾患や原因不明の病気が増えました。
 アレルギー症状というのは、中毒症状の一部です。ましてや、肉の生食などというのは、自殺行為であって、あのような死者を出すような事態になったのです。
 もちろん、欧米諸国の人たちは、古くから肉食をしていた歴史があるので、肉食に対する抵抗力がある程度備わっていますので、日本人ほど影響は受けていません。しかし、日本人にはそれがありません。
 ライオンやトラなどの肉食動物の腸は、肉の腸内での腐敗の害をできるだけ少なくするために短くなっていますが、ゾウやキリンなどの草食動物の腸は、食物の繊維を時間かけて消化しなくてはならないために、肉食動物より長くなっています。
 同様に私たち人間の腸も、肉食をする欧米人の腸は比較的短く、肉食をして来なかった日本人の腸は幾分か長いと言われています。
 また、肉食動物の歯は鋭く尖(とが)っていますが、草食動物の歯に犬歯はありません。では人間の歯はどうかというと、肉食と草食の中間である雑食に適した歯並びをしています。臼歯(きゅうし)5、門歯2、犬歯1の割合なので、食生活も主食5、副食3の割合で、副食のうち野菜果物が2、肉・魚が1の割合であることがわかります。
 肉食動物と草食動物の違いについて、もう一点は性質の違いです。肉食動物は獰猛(どうもう)で瞬発力に優れていますが、集中力や持久力に欠けます。一方、草食動物は穏やかで我慢強く、集中力、持久力に優れています。
 最近、落ち着きがない、じっとしていることができないお子さんを多く見かけます。また子どもや若者ばかりではなく、分別のつく大人の中にも、我慢できない、すぐにキレる人が増え、自分の思い通りにならないと他人を傷つけてしまうなど、昔ではとうてい考えられない事件が度々起きています。
 これも、食生活が全く無関係とは言えないでしょう。このように、食生活というのは、人間の身体だけではなく、精神にも影響するということを心に留めておいてほしいものです。


動物性食品には不燃性脂肪が含まれ
これを摂りすぎると内臓を傷つける


 動物性食品というのは、魚や肉類だけではありません。牛乳などの乳製品や卵類も含まれます。乳製品や卵というのは、そのままのものだけでなく、パンや菓子類や加工食品にも、必ずと言って良いほど含まれています。ですから、毎日の食生活の中で、私たちは知らず知らずのうちに、相当の量の動物性食品を摂(と)ってしまっている可能性が高いです。
 また、動物性食品には不燃性脂肪が含まれています。不燃性脂肪を摂りすぎると、内臓を傷つけ、ガンの発生に繋(つな)がることも少なくありません。欧米人に多かった大腸ガンや乳ガンが近年では、日本人にも増えていますし、今や三人に一人がガンに罹(かか)る時代となっています。
 そういう意味では、外食や加工食品などは何が入っているか判りません。そのような食品を食べるよりも、お母さん、あるいはお父さんが、家族の健康を担っているということを意識して、できる限り手作りの料理を家族に振舞ってあげることの重要性も解ってほしいものです。
 そうは言っても、動物性食品を全く摂らないベジタリアン生活をするというのは、なかなか難しいでしょうから、その摂り方を工夫すれば良いでしょう。月に数回に止めること、動物性食品を摂るときは、一緒に倍量のジャガイモなどの野菜を摂ることによって、血液を中和するようにすることです。
 また、分子生物学的に言いますと、人間と遠い動物を食すほうが中毒になりにくいのです。エビ・カニなどの甲殻類が一番お勧めで、次に軟体動物の貝類、イカやタコなどです。脊椎(せきつい)動物で見た場合は、魚類、鳥類、哺(ほ)乳(にゅう)類の順になります。
 しかし、どうしても肉が好きで食べたいという人は、人間と遠いという点では二足の鳥でしょう。次に四足の肉となると、草食の牛、羊、ヤギなど。同じ四足でも、豚は雑食ですのであまり勧められません。
 食事は生きていくためには欠かせないものです。しかし、空腹を満たすため、また漫然と習慣的に摂るのではなく、食事は薬(やく)餌(じ)として、ご自身やご家族の体質や健康を考えながら、何よりも旬(しゅん)の、できるだけ新鮮な食材で調理し、家族揃(そろ)って楽しく食べることが一番です。