診療室から Vol.54 風疹
風疹が流行っています お腹の赤ちゃんを守りましょう
昔から「三日はしか」と呼ばれる風疹
症状は似ていても、全く別な病気


 風疹(ふうしん)は子どもに多い病気として知られています。ところが、この風疹が成人に流行(はや)っていることは、テレビジョンや新聞で多く報道されており、皆さんもすでにご存じだと思います。国立感染症研究所が公表した、今年に入ってから4月中旬までの感染者数は、4000人を超えています。
 これは、昨年の同じ時期の30倍以上です。毎年風疹のピークは春先から夏ですので、この文章が載る頃には、さらにたくさんの人が発症している可能性があると思います。
 風疹は風疹ウイルスによって起こり、人から人にうつる伝染病です。人からうつって約2〜3週間の潜伏期間の後に、発熱(37度から38度)とともに小さな赤い発疹(ぶつぶつ)が顔から胴体、そして手足へと拡がっていくのが特徴です。
 発疹は3日から5日くらいで消え、痕(あと)も残らないことが多いです。だいたい経過は良好ですが、稀(まれ)に、脳炎などの重い合併症を起こすこともあります。
 また、風疹は他の病気と間違えられやすい疾患です。本人が「小さい時にあなたは風疹にかかったことがあるから」と親御さんから聞いていても、実は、麻疹(はしか)や水ぼうそうのことを親御さんが勘違いして伝えていることもよくあります。
 昔から、風疹が「三日はしか」と呼ばれるのは、症状がはしかに似ているからですが、全く別の病気です。ちなみに風疹の伝染力は、はしかや水ぼうそうよりも弱いといわれています。
 風疹は、発疹とリンパ節の腫(は)れがあるとだいたい診断がつきます。しかし、りんご病や夏風邪による発疹症などは風疹と症状が似ているので、医師でも診断がつき難いこともあります。血液検査で風疹の抗体価があれば診断できますが、抗体価まで調べることは稀でしょう。


風疹は妊娠初期ほど影響が出やすく
「先天性風疹症候群」の子どもが出生


 風疹が大きな問題になるのは、妊娠している女性が風疹にかかった時です。妊娠5ヵ月頃までの妊婦さんが風疹にかかると、へその緒を通じてお腹の赤ちゃんが感染することがあります。
 妊娠していることに本人も気が付かないほど、妊娠のごく初期に風疹に感染してしまう危険性もありますので注意が必要です。
 風疹は、妊娠初期であるほど影響が出やすく、生まれつき先天性白内障で眼が見えない、あるいは耳が聞こえない、心臓などに障害を持って生まれてくることがあります。これらは「先天性風疹症候群」と呼ばれています。
 この「先天性風疹症候群」の赤ちゃんが、昨年の秋から日本国内で9人も生まれています。今年に入ってからだけでも、東京都と愛知県と大阪府で一人ずつ、3人も生まれています。
 女性が一度妊娠してしまうと予防接種は受けられません。そのためにも、周囲の人々が予防接種を受けるなどして、妊婦さんを守る必要があります。
 風疹が流行している原因の一つは、20代から40代の男性は、集団接種ではなかったために受けていない人が多いからです。
 詳しく説明しますと、34歳以上(昭和54年4月生まれ以前)の男性は、おそらく予防接種は受けていません。34歳から51歳の女性は集団接種で一度は接種しています。
 23歳(平成2年4月生まれ)から34歳までの男女は受けていれば1回の個別接種です。23歳以下の男女は個別の2回接種ですが、受けていない人もいると思われます。
 また、境目の年齢(34歳や23歳)であった場合、情報がいきわたらず、この通りでない場合も多いと思います。
 現在は、2回接種ですが、23歳以上の人は受けていても1回で良いとされていました。1回受けていても、免疫ができていない場合もありますし、時間の経過とともに、免疫が消えて感染しやすくなっていることがあります。
 全体的に男性の接種率は低いです。職場に妊婦さんがいて、男性の上司が感染していることが判って、大騒ぎになることもあると聞いています。
 予防接種によって抗体ができたのではなく、実際に風疹にかかった場合は、免疫は生涯続くといわれています。しかし、先ほど記したように、風疹でなく別の病気(はしかや水ぼうそうやりんご病)だったということも考えられるので、注意が必要です。


風疹対策は日頃の手洗い、うがいと
若い女性、20〜40代男性の予防接種


 予防接種は保険が適応されません。しかし、費用は自治体から補助が出る場合もあります。また、金額も医療機関によりまちまちですので、直接問い合わせてください。
 予防接種は内科や小児科、産婦人科で受けられますが、取り寄せないと置いていない場合もありますので、予約してから接種することを勧めます。
 その際、医療機関に風疹だけの単独ワクチンがなければ、はしかとの混合ワクチン(MRワクチン)で良いと思います。費用は単独ワクチンよりも高くなります。
 接種してから抗体ができ、風疹に感染しなくなるまで2〜3週間かかります。女性が予防接種を受けた場合は、2ヵ月程度は、念のために妊娠を控えるようにといわれています。
 成人が風疹にかかった場合は、子どもがかかるより症状が重く、リンパ節の腫れによる痛みや関節痛、目の充血、高熱が続きます。仕事も1週間程度休まなくてはなりません。仕事や生活にも支障をきたします。
 先日も、風疹にかかった50歳くらいの男性サラリーマンが、「結膜炎かと思って、薬局で目薬を買ってさしていたら、熱が出て発疹が出て、病院に行ったら風疹だと言われた。リンパ節の腫れや関節痛が続き、本当にしんどかった。周囲にかかっていた人はおらず、どこでうつったのかさっぱり分からない。特効薬も無く、家で安静にしているしか仕方がなかった」と、言っていました。
 風疹ウイルスは、感染した人の鼻や喉からの分泌物の中に含まれており、くしゃみや咳で飛(ひ)沫(まつ)して拡がります。知らないうちにこの分泌物が付着した物に触れ、それが手指によって自分の鼻や喉にウイルスを運び込んでいることがあります。日頃から、手洗い、うがいを習慣づけましょう。
 風疹の予防接種は、自分のためにも、周りのこれから生まれてくる赤ちゃんを守るためにも、必要なことです。受けることをかかりつけの先生に相談しましょう。特に、若い女性と、20代から40代の男性には受けることを勧めます。