診療室から Vol.46 心臓、循環器の検査
肥満は病気の因だけでなく聴診器にも敵(?)のよう
健康診断で異常を指摘され
精密検査を望む中高年者達


 私の所に来られる患者さんに、健康診断で異常を指摘され検査を勧められた、時々息切れがする、動いた時に胸が痛むなどの理由から精密検査を望む人がいます。もちろん若い人も検査は大切ですが、特に中年以上になるとこれらは珍しくありません。そこで今回は、心臓の検査についてまとめてみました。
 心臓や循環器の病気は、心臓自体の異常、脈拍の異常、血管の異常、脂質異常(コレステロールや中性脂肪など)等に分けられます。
 診察はまず問診から始まります。痛みがあるのなら、どういう時に痛むのか、喉(のど)や肩などに痛みが拡がるかなどです。次にいつから症状が出たのか。さらにその症状はどのくらい続くのかです。これらの問診で、病気が何であるのか、重症度、緊急性などを類推します。また他の検査のプランにも関係します。
 さらにこれは既往歴といいますが、過去の病歴、病気でなくても血圧が高いなど異常を指摘されていなかったか。また血縁の家族の病歴も訊(き)きます。これは家族歴といって、遺伝性の病気の有無等を類推します。高血圧症や高脂血症など、遺伝的に異常となる病気は結構あります。
 次に身体の診察です。横にはなれないほど辛(つら)く、座るとましではあるが呼吸が荒いのは、心不全の「起座呼吸」という所見です。またアキレス腱(けん)が太く、関節に痛みのない塊(結節と呼ばれる)があれば、家族性高コレステロール血症が疑われます。
 そして血圧を測ります。予約ぎりぎりに駈け込むと通常より高めになりますので、余裕をもって来て下さい。上が130、下が85以下なら正常です。
 起立性低血圧の人は、座った姿勢から立ち上がって3分以内の血圧が、上が20、下が10より下がる場合に診断がつきます。ふらつきの原因の一つです。正常な脈拍数は、1分間に60から80くらいですが、脈の速度やリズムが規則正しいかもチェックします。
 そして聴診です。聴診器を使って心臓の音を聞きます。心臓の中には、閉じたり開いたりして血液の流れを調節する弁があります。弁に異常があれば異常音がします。狭ければ狭窄症(きょうさくしょう)、閉まりが悪いと閉鎖不全症です。そういう立日を聴取します。
 余談ですが、痩せている人と太っている人の心音は、どちらが大きく聞こえると思いますか? 痩せている人です。肥満は病気の因だけでなく、聴診にも敵(?)のようです。


最近のメタポリック症候群の測定は
動脈硬化を抑えるアディポネクチンも


 心電図検査は、脈拍異常などや、虚血といって、心臓を養う血管に狭窄や閉塞(へいそく)がないかを類推します。より異常を判りやすく診るために、3段程度の階段の昇降、ランニングマシンの上を走る、自転車を漕(こ)ぐなどの運動をしてもらい、その前後での心電図の変化を診ることもあります。
 不整脈が疑われた場合は、一日にどの程度どんなタイプが出るのか、また虚血の可能性がある場合にも24時間心電図、ホルター心電図と呼ばれる検査をします。この検査は外来でもできます。その日のシャワーは無理ですが、その他は通常通りに生活し、胸痛やふらつきなどの症状があれば、渡した日記に時間とともに記入してもらいます。
 胸部のレントゲン撮影は、1枚の写真でも色々な情報が得られますが、特に心臓の大きさを診ます。心臓や血管に異常があると心臓に負担がかかり、しばしば心臓の壁が厚くなつたり、心臓の中(腔)が大きくなります。すると、胸部写真で心臓が大きく映ります。その他、胸に水が貯まったり、動脈が拡大したりしているかを確認します。
 採血では、総コレステロール(善玉コレステロール=HDL、悪玉コレステロール=LDL)、中性脂肪の数値から高脂血症を、トロポニンやCKMBという、心臓から出てくる成分の数値で急性期の虚血(心筋梗塞や狭心症)を判断します。
 昨今話題のメタポリック症候群では、腹囲や血糖値を測定しますが、最近はさらに、アディポネクチンという脂肪細胞から出される物質を測ることがあります。アディポネクチンは動脈硬化を抑える働きがあり、脂肪細胞が大きくなると減少し、小型化すると増えるので、値が小さいと要注意です。


循環器や心臓の病は動脈硬化と関係
日頃から動脈硬化にならない生活を


 超音波検査 (エコー検査) では、超音波が身体の中を通過したり、反射するのを利用して、身体の外から心臓の内部や血流を診ます。放射線は全く出ませんので、何度でも、ベッドサイドでも行なえ、情報量も多いので、便利で優秀な検査です。
 虚血(狭心症や心筋梗塞)、心肥大(心臓の壁が厚い)、心拡大(心臓の腔が大きい)、弁膜症(弁の異常)など、心臓の異常から大動脈の異常など様々な疾患の診断が行なわれます。
 最近の話題の一つを。心臓は全身に血液を送るポンプの役目をしていますが、心不全はその力が衰えている状態にあります。
 心不全は、心臓の収縮力が弱まるのが原因と考えられてきました。しかし収縮力は正常でも、拡がる力、つまり拡張力が弱いタイプがあることが判ってきました。ポンプが血液を出そうにも、ポンプに入る血液が不十分なために、収縮力は十分でも血液は不足します。これを「拡張不全」といいますが、この診断にエコー検査が役立ちます。
 CT検査といえば、頭から足まで細かく診ることができる検査として有名です。従来なら、カテーテル検査をしないと判らなかった冠動脈の狭窄や閉塞が、「MDCT」というCTで、より判るようになりました。これにより、外来で、短時間で虚血の診断が可能になりました。
 心筋シンチグラフィ検査は、話題の放射性同位元素を使った検査です。冠動脈の狭窄、あるいは、閉塞はしているが心筋は生きているなどが判るという、この検査独自の特徴があります。
 心臓カテーテル検査は先述したように、CTの発達のため、カテーテル検査の頻度は減りました。しかしCT検査で虚血が疑われた時や耐えられない胸痛、心不全を伴うなどの緊急検査に、この検査は欠かせません。
 手首や太ももの付け根の動脈を穿刺(せんし)し、中腔の管のカテーテルを血管の中を心臓まで入れます。その後手元から造影剤を注入して血管の中の状態を観察します。狭窄や閉塞が認められ、治療の必要性が認められると、血管を拡げる治療に進みます。
 問診から心臓カテーテル検査まで、いわば、心臓の簡単な検査(聞き取り)から清潔操作が必要な検査まで、限られた誌面でできるだけ平易に解説してみました。何か症状が認められる、人間ドックや健康診断で精査を勧められた時は、あわてずに循環器内科を受診してください。上述した検査のどれかが行なわれることになります。
 循環器、心臓の病気は、多くは動脈硬化と関わりがあります。動脈硬化にならないような生活、つまり、塩分を抑えた食事、運動、適度な睡眠、もちろん禁煙などを心がけてください。その上で診察が必要な時には迷わず受診することを勧めます。