診療室から Vol.42 子どもとメディア
お母さん、子どもの携帯ネット依存に気をつけて
ネット依存対策に取り組む韓国と
その実態すらつかめていない日本。


 1990年代以降、携帯電話(携帯) やインターネットが普及し、最近では、さらに多機能のスマートフォンなどが低年齢の子どもたちにまで広まっています。これらはとても便利な反面、事件や事故に巻き込まれるケースや、心身の発達に悪影響を及ぼすなど、子どもたちに多くの問題が起きています。
 このような状況から、日本小児科医会では2004年に、「子どもとメディアに関する提言」を発表しています。
@2歳までのテレビ、ビデオの視聴は控えましょう。
A授乳中、食事中のテレビ、ビデオの視聴はやめましょう。
Bすべてのメディアへ接触する総時間を、一日2時間までに制限しましょう。
C子ども部屋には、テレビ、ビデオ、パソコンを置かないようにしましょう。
D保護者と子どもで、メディア(テレビ、ビデオ、ゲーム、携帯など)を上手に利用するルールを作りましょう。
 また小児科医も、学会と協働でメディア漬けになることによる子どもたちへの悪影響を、子どもやお母さんに知ってもらうように努めています。
 では、実際にどのような問題が起きているのか、新聞の記事などから拾ってみました。
@遮断機が下りている踏切で、携帯電話に夢中の高校生がはねられ死亡。
F自宅の火事で、一度逃げた高校生が携帯電話を取りに戻り死亡。
B女子中学生が、携帯電話の出会い系サイトで知り合った男にメールで写真を送り脅迫される。
C5歳児が、死んだペットを見て「パパ、電池入れ替えてよ」と言った。
D学校に行かない10代の男子が24時間ネットゲームで部屋に引きこもる。彼はゲームの世界では達人として尊敬されている。
E高校生の携帯端末の使用実情調査で、授業中の使用・6割。
 入浴中の使用・5割。圏外表示に不安・5割。30分毎に携帯チェック・6割。
 特にDのような昼夜を問わないゲームで、成績低下、不登校、引きこもり、体調不良などを引き起こす例が多いようです。
 韓国では日本より早く、ネット依存、それに起因する殺人事件や引きこもりなどが社会問題になり、国を挙げてその対策に取り組んでいます。またこの実態調査から、啓発活動、治療までが積極的に行なわれています。
 それに比べて日本では、相談、治療というシステムは未だ確立されていませんし、その実態すらつかめていません。保護者や教師、医師が、日常の中で発見し、対策をとる必要があります。


携帯がないと不安で、枕元に置く
握ったまま寝るは、依存度が高い。


Q・メディアの総接触時間は?
A・平日4時間以上、休日6時間以上はメディア漬け状態。携帯、ゲームに限らず、電子映像画面への総接触時間を減らす。
Q・一日のメール発信数は?
A・一日50件以上は要注意。平成21年の文科省の調査で、一日100件以上の送受信は、小学6年生1%。中学2年生7・3%。高校2年生4・7%。
Q・携帯が手放せない?
A・禁止されている学校や、トイレ、風呂にも持ち込み、食事中も携帯をチェック。
Q・即レスをする、あるいはしてもらわないと不安?
A・即レスとは「即時にレスポンス・返事」の略で、友達からのメールには即レスが友好の証で、15分から30分以内にする。そのため、メールを始終チェックし、肌身離さず持ち、寝る時も枕元に置くか握って眠る。
 また、相手からの返信が遅いと「受け取りたくないのかも・受信拒否」と勘繰り、不安に感じる。
Q・ベッド(布団)の中でも携帯を使用?
A・子どもたちの多くは深夜までメールをし、寝不足になっている場合もある。
Q・携帯(ネット)について注意するとキレル?
A・依存になっている子どもたちは、注意されると険しい表情にガラッと変わる、暴言を吐く、暴力を振るうなどの問題行動を示すことがある。
Q・携帯を持ったらほかのことができない?
A・しなくてはならないこと(勉強や手伝いなど)を後回しにする。これは依存度が高いと考えられる。
Q・携帯で知り合った人と出会ったことがある?
A・出会い系サイトだけでなく、ゲームのサイトや趣味のサイトで出会うこともあり、事件に巻き込まれている例が少なくない。
Q・本音が言えるのは、メールや掲示板の書き込みだけだ思う?
A・普段は無口な子やあまり自己主張しないような子も、意外と大胆な書き込みをする、友人をいじめるなど攻撃的な面を見せる。
Q・携帯を忘れると必ず取りに戻る?
A・携帯が手元にないと不安な表情を示すのは依存度が高い。
 これらの問いに当てはまる兆候があるようでしたら要注意ですので、次のように接してみて下さい。


メディアでは得られない楽しみを
知っている子は依存することはない。


 まず、メディア漬けの状態を毛嫌いしたり、頭ごなしに否定したりするのではなく、子どもたちが大切にしている世界であることを尊重しましょう。
 保護者のほうから子どもたちに近づき、アニメやゲームであれば一緒に見、その世界を大事にして「あなたを愛しているよ、一人じゃないよ」というメッセージを子どもに送り続けます。
その上で、
@メディア漬けになると感情のコントロールが難しく、攻撃的になりやすくなること。また、睡眠不足や視力の低下や、無気力になり家から出られなくなるなど、体や心に大変な悪影響が出ることを理解させる。
A食事中は携帯を触らない。一日のゲーム時間、携帯やゲームは自分の部屋に持ち込まないなど、家庭のルールを子どもと決めて守らせる。
B決めた家庭のルールは友達に伝え、即レスできないこともあるのを理解してもらう。仲間にも上手に「ノー」が言えるように指導する。
 これらが家庭では難しい場合は、教師や医師に相談して下さい。対策が早ければ1週間で改善する場合もあります。
 今や、携帯やゲーム、インターネットなどのメディアから、全く隔離して子どもを育てることは無理だと思います。小さい時から上手なメディアとの付き合い方を教えることが大切なことだと思います。
 メディアでは得られない友人との本当の会話や、スポーツで汗を流す楽しさを知っている子どもたちは、決して心身に影響を及ぼすほどにこれらのメディアにのめり込み、依存することはないように私は思います。