診療室から Vol.38 乳がん
自己検診ができる乳 明日から「予防」と「検診」を
欧米での乳がんは減少傾向にあるのに
日本が増加の一途にあるのは何故?


 近年、日本における乳がんの発症率は増加傾向にあり、30〜60歳代女性が罹(かか)るがんでは、死亡率第1位となっています。また、乳がんが発症する年齢は、30代後半から増加し、40歳代後半がピークに達するという続計があります。
 乳がんは、自分で触って自分で発見することのできる可能性の高いがんです。しかし、このように自己検診を行なっている人はまだまだ少ないようです。
ましてや、医療機関を受診して検診を受ける人は、欧米人に比べると、はるかに少ないのが現状です。
 そのため、乳がん死亡率は、欧米人は減少傾向にあるのに対して、日本人は増加しているのが問題となっています。


乳がんの主原因は欧米化の食生活と
女性の生活スタイルの変化も誘因に。


 乳がんの患者数が増加している原因として、やはり食生活の欧米化や生活スタイルの変化が挙げられます。
 食生活の欧米化や運動不足にょり、肥満の人が増えておりますが、肥満は乳がんのリスクを高めます。また、喫煙や飲酒も明らかに危険因子となり、飲まない人に比べると、乳がんに握りやすいと言えます。
 さらに、生活スタイルの変化により、女性の社会進出が増えました。それに伴い、二、三十年前と比べると、夜間勤務や不規則な勤務をする人も増加しています。不規則な生活も、乳がん発症に関係するということが判ってきました。
 それから、更年期障害の治療法の一つであるホルモン療法(HRT)や、避妊の目的で使われる経口避妊薬(ピル)も、わずかながら乳がんの発症の可能性を高めると言われています。
 以上のことから、日本人の乳がん患者は増加の一途をたどっており、しかも低年齢化していることも問題となっています。また、若い頃に乳がんの手術をしたことのある人が、近年の長寿社会に伴い、何十年も経ってから再発する人もいます。
 乳がんには、遺伝性のものや家族性のものもあります。身内に乳がんになつた人がいる場合は、要注意ですので定期的な検診をすることを勧めます。
 女性にとって乳がんというのは特殊ながんと言えます。手術による乳房切除というのは、外見の変化を目の当たりにするだけに、「命の代償として乳房の切除を」と言っても、なかなか受け入れられないのが現実です。そのためにも、自分でできる予防と検診を、改めて見直してほしいと思います。


自己検診で異常がなくても定期的に
医療機関で超音波検査などの検査を。


 また、乳がんだけではなく、全てのがんに共通することですが、やはり、まずは食生活の改善と運動不足の解消が大切です。
 食生活は、動物性タンパク質である肉類や乳製品、脂質類を減らし、血液を浄化し抗酸化作用のある植物性食品である、大豆などの豆類、海藻類、緑黄色野菜や根菜類、ゴマなどを多く摂るように心がけましょう。
 動物性タンパク質を摂る場合は、鶏、豚、牛肉類よりも魚類のほうが望ましいでしょう。いわゆる、伝統的な日本食である和食中心の食事がお勧めです。
 運動不足に関しては、まず足を使って歩くことを心がけましょう。外出の機会が少ないとか、関節炎などで歩くことが難しい人は、スロー筋力トレーニングという、ゆっくりと筋肉に負荷をかける手軽な運動が推奨されています。
 これは、椅子(いす)に座ってでもできます。短時間で週に2回でも少しずつ筋力アップすると言われています。可能な限り動くことを止めずに、継続して行なうことが健康維持の秘訣(ひけつ)です。
 それから、自己検診の方法ですが、閉経前の人は月経終了後1週間くらいの間に、閉経後の人は、毎月、日を決めて行なって下さい。具体的なやり方は、
1鏡に向かって立ち、両腕を下げた状態で
@乳房の形や大きさに左右差がないかを見る。
A乳首のどこかに、皮膚の変色やへこみ、ひきつれ、ただれがないかを調べる。
2両腕を上げた状態で1と同様のことを行なう。
3右手を頭の後ろに当て、渦を書くように左手を動かして指で左乳房にしこりがないか調べる。右乳房も同様に行なう。
4仰向けになつて、背中に低い枕かバスタオルをたたんで入れ、左腕を上に挙げ、右手で左乳房の乳首より内側を指の腹で胸部の中央へ指を滑らせながら、しこりの有無を調べる。右乳房も同様に行なう。
5仰向けのまま、左腕を下げ、右手で左乳房の外側の部分を外から内へ向かって同様にしこりの有無を調べる。右乳房も同様に行なう。
6起き上がり、右手の指を揃(そろ)えて左脇の下のしこりの有無を調べる。右脇も同様に調べる。
7左右の乳首をつまんで、血液の混じった分泌物が出ないかどうか調べる。
 たとえ自己検診で異常が認められなくても、医療機関でマンモグラフィーや超音波検査を定期的に受けるようにして下さい。乳がんは、早期発見すれば治癒する可能性の高いがんですので、明日から「予防」と「検診」を心がけることを勧めます。