診療室から Vol.34 薬との上手な付き合い方
病院に行くのが億劫と 売薬に頼ってはいませんか
一昨年6月の薬事法の改正によって
薬の購入がコンビニなどでも可能に。


 薬事法が一昨年の6月1日に改正されてから、皆さんが薬を手に入れる方法が大きく変わりました。また、TVで「スイッチOTC」という言葉も耳にしたこともあるのではないかと思いますが、薬はこの数年で変化しています。今回はそのようなまだ馴染みのない薬に関連した言葉の説明を交えて、薬との上手な付き合い方を記します。
「薬の世話にはならないよ」と言う、きわめて健康な人もいるかも知れませんが、通常、幾度かは薬を服んだことがあると思います。「いや、むしろ結構よく服んでいる」と言う人のほうが多いかも知れません。
 誰でも簡単に医療機関にかかることができるわが国では、それだけ薬を手にし、薬に頼ることも多いと思います。また、最近ではディスカウントショップやホームセンター、コンビニエンスストアーなどでも薬を販売する店舗が増えました。さらに、ある種の薬では、インターネットで購入することも可能です。


スイッチOTC薬で痛みが治まると
もう、病院に行かなくても大丈夫?


 薬と言っても様々な種類があります。医師の処方箋(しょほうせん)に基づいて調剤薬局で受け取れる「医療用医薬品」や、医師の処方箋がなくても買うことができる「一般用医薬品」があります。
 この 「一般用医薬品」 にも、服用の危険性の度合いによって、第1類から第3類まで分類され、それぞれの危険性に応じた販売方法が定められています。「登録販売者」が配置された店舗では、風邪薬なども含まれる「第2類」と「第3類」の医薬品が販売できます。また、ネットで販売できるものは、最も危険性の低い「第3類」医薬品に限定されています。
 この一般医薬品は、別名「OTC医薬品」と呼ばれたりもします。この 「OTC」 とは、Over The Counterの頭文字をとった言葉で、「カウンター越しに薬剤師から購入する薬」という意味があります。
 最近、薬のコマーシャルなどで「スイッチOTC」という言葉を聞いたことはありませんでしょうか。「スイッチOTC」という薬は、これまでは、医師の処方箋によらなければ使用できなかった医療用医薬品の中から、長年の使用実績があり、副作用の心配が少ないなどの必要条件を満たした医薬品を、薬局などで処方箋なしに購入できるように「一般用医薬品」として認可したものです。既に出ているジュネリック薬(ゾロ製品)とは異なります。
 このスイッチOTC薬は、先に記した一般用医薬品の第1類に分類され、薬剤師がいる店舗でのみ購入でき、さらに購入する際は、薬剤師からの説明が必要な薬となります。
 このスイッチOTC薬の歴史は新しいものではありません。イブプロフェンが成分の鎮痛薬が、医療用から一般薬にスイッチ(切り替わる)されたのは、1985年のことです。それ以来、薬の需要にあわせて、胃薬や抗アレルギー薬などの幾種類かの薬がスイッチされました。
 風邪を引いて喉(のど)が痛い、歯が疼(うず)くなどで病院や歯科医院に行った時に、「ロキソニン」という鎮痛薬を処方されたことはないでしょうか。この非常によく用いられる解熱鎮痛薬ロキソニン(ロキシプロフエン)も、最近スイッチされ「ロキソニンS」という商品名で販売されるようになりました。
 医療用のロキソニンは、解熱鎮痛効果ばかりではなく消炎効果もあるので飲み薬だけではなく、貼り薬などの製品もあり非常に幅広く使われています。
一般薬のロキソニンSは、医療用のロキソニンと全く同じ成分で市販されています。購入時には痛みなどの症状を薬剤師に伝えて、薬剤師が適切と判断すれば、服用の仕方やその他の注意事項の説明を受けて薬を買うことができます。このように病院に行かなくても、非常に効き目の鋭い薬が薬局で手に入るようになってきました。
 「胃が痛い」「頭痛がする」という体調の変化が生じた時に、「よくあることだから」とその症状を軽く考える、忙しい社会人の場合は、「時間を割いて病院に行くのが億劫(おっくう)だから」と、症状だけを抑えるために薬を買って服むという体験を、誰しも日常的に行なっているのではないでしょうか。
 そのような時に、非常に効き目の鋭い薬は、症状をよく抑えてくれます。その結果、症状が再発してもついつい薬に頼ってしまうようになるものです。皆さんも、このようなことに心当たりはありませんか。


スイッチOTC薬を正しく用いると
生活羽目慣病予防、健康維持に役立つ。


 実は、これは非常に危険なことです。そもそも、完全に病気の原因を改善する働きを有する薬はないと言っても過言ではありません。そのような働きを持つものは、菌を殺して症状を改善する抗菌薬だけです。
 風邪などで熱が出た時に、闇雲(やみくも)に解熱剤で熱を下げると身体は楽にはなりますが、せっかく体温を上げて風邪の菌と戦うという自己の免疫活動を妨げているということになりかねません。さらには、楽になったことで治ったと思い、十分に休養もせずに動き廻るので、結局は完治せずに何時までも症状を長引かせることになります。
 そのような、間違った服用をしないために、まずは、薬剤師に症状をよく相談して適切な薬を選んでもらって下さい。そして、購入時に受けた説明や、薬の添付書をよく読んで服用方法を必ず守って下さい。その際、服薬中の胃腸障害、発疹(ほっしん)や発熱に注意して下さい。もちろん、薬とアルコールの併用は絶対にしないで下さい。
 それと、疎かにしがちですが薬の保存も大切です。高温、多湿な所を避けて適切な場所で保存して下さい。以上のように薬の服用には、薬の正しい理解と使用上の注意が非常に大切です。
 さらに必ず守ってもらいたいことは、1〜2回服用しても症状が全く良くならない場合や、3〜5日経っても症状が繰り返されるようでしたら、必ず医療機関を受診することです。絶対に自己判断で長期間使い続けないことです。
 病気になれば病院に行くのはもちろんですが、その一方で、悪くさせる前の軽いうちに、自分で治すことのできる症状も多いものです。
 軽い症状であれば薬を服んだり、無理をせずに休むなどで、自分の健康を自分で管理することができます。これを、セルフメディケーション(自己治療)と言います。つまり、売薬などを用いて自分自身で病気を治療すること、その考え方をさします。先に記したスイッチOTC薬の販売も、このセルフメディケーションを助けるために行なわれているものです。
 病気や薬について正しい知識を持って市販薬を活用し、積極的に自分自身の健康管理を行なう。それによって、軽い病気ならその症状を自分で改善し、生活習慣病の予防や健康維持にも役立てることができるのです。
 健康な毎日を過ごすためにも、薬を正しく用い、上手に付き合っていくことをお勧めします。