診療室から Vol.33 性感染症・STD
若年層に拡大する性感染症 今こそ重大な「純潔教育」
性感染症増加の根本的な問題は
自分とは無縁と信じている感覚。


 最近、未成年を含む若い世代の間で性感染症・STDが拡大し、男性では20代前半〜40代前半、女性では10代後半〜30代前半を中心に爆発的に増えています。
 性感染症・性病とは性交渉によって感染する病気の総称で、STDはsexually-transmitted-diseasesの略です。性感染症の原因は、細菌、ウイルス、原虫、微生物など様々です。
 細菌性では淋菌(りんきん)感染症が、ウイルス性では性器ヘルペス、HPV(ヒトパピローマウイルス)による子宮頚(けい)がん・尖圭(せんけい)コンジローマ、HIV感染症(エイズ)、肝炎などです。また、原虫や虫の仲間による疾患には、膣(ちつ)トリコモナス症、疥癬(かいせん)など。その他の微生物では、性器クラミジア、性器カンジダ症、梅毒などがあります。
 STDの爆発的な増加の理由は、次のようなものです。
@性行為の低年齢化
A高い感染率
B性の自由化・多様化・商業化(不特定多数のパートナーや同性間交渉、援助交際など)
C性感染症という病気や予防に対する知識不足
D治療の中断
E女性の身体についての知識不足
F次世代に対する責任感の欠如
G生命誕生の神秘に対する知識不足
 しかしこの間題の根本は、STDに対する感覚が昔のままの「性病」という認識で、性病は、非倫理的な社会行為や歓楽街での売春などで起きるものと思われていることで、多くの人が自分とは無縁と信じ、むしろ無関心さを誇りに思い、蔑視(べっし)の対象にさえしています。
 しかし現実は、社会的風潮と性の自由化、性の解放が重なり、性行為が、子孫繁栄という本来の目的以外に抵抗なく日常化し、性の多様化により、性病が歓楽街などの特殊地域を離れて一般家庭の中に蔓延(まんえん)してきています。
 またもう一つの原因に、STDの軽症性と無症候性があります。
そのために、自らが感染したという自覚がほとんどないこと、加えて多くが無症状のために、「ピンポン感染」という、知らないうちにパートナーに繰り返しうつしていることがあります。
 1回の性行為で、クラミジア(病原微生物・クラミジアトラコマチス)で50%、淋菌で30%ほどとい、高い感染率の報告があります。


女性のがん死亡第2位の子宮顛がん。
ワクチンでの予防100%は不可能。


 STDの多くは不妊症の原因になるほか、出産時にわが子に感染させてしまうこともしばしばあります。また妊娠中に治療のための薬を飲む場合には、副作用のリスクも伴います。
 クラミジア感染症、HIV感染症は増加の一途にあります。その無症候性と性の自由化の波に乗って爆発的に増加し、1992年以降、STDの中では雁患率トップです。女性の80%、男性の50%に症状が出ないといわれています。
 女性の20代前半では16人に1人、10代後半は21人に1人が感染しているといわれています。
また、高校生の性経験者の男子は6・7%、女子は13・1%がクラミジアに感染しているとの報告があり、性の健康の危機ととらえられています。
 STDは身体の構造上、男性より女性のほうが多く、クラミジアでは、男性1対女性3です。男性は感染部位が小さく、排尿時に沁(し)みるなどから発見しやすいのです。また排尿により病原菌の排泄の可能性もあります。
一方、女性は骨盤内全体が感染対象となるために、感染した細菌やウイルスが長く体内に貯留するため、症状が出にくく感染に気付かず治療が遅れます。以上の点から感染者の増加に繋がっていると考えられます。
 不妊の第一原因は、クラミジア感染症ともいわれています。感染後もほとんど無症候性のために卵管炎を繰り返し、慢性卵管炎から癒着(ゆちゃく)し、卵管が閉塞(へいそく)して慢性の腹膜炎や不妊症になります。子宮外妊娠の80%がクラミジア抗体陽性です。
 子宮頚がんは、この十数年間で増加の一途をたどり、女性特有のがん死亡原因としては、乳がんに続き第2位です。また最近、子宮頸がんはHPVの16、33、52、58型による感染が原因との報告があり話題になっています。
 しかし、このウイルスはごくありふれたもので、性経験のある全女性の約8割の人が感染し、ほとんどが自然治癒するといわれている一般的な感染症です。
 HPVは1976年に発見され、200種類以上のタイプがあります。その内の約20種類ががんに関係しているとされ、一部の種類に対するワクチン(サーバリックス)が作られて、昨年から子宮頸がん予防目的として承認されました。
 あたかも、このワクチンで子宮頚がんが100%予防可能のように宣伝していますが、日本で承認されたワクチンの予防可能なウイルスは2種類です。しかも日本人に感染しやすいウイルスとは異なっています。
 ですから、日本人がワクチンを射(う)っても予防の確率はかなり低いと思われます。もちろん、子宮頚がん以外のSTD予防にも効果はありません。また、全ての薬剤に共通する副作用もあることを忘れてはいけません。実際、死亡例の報告もあります。


純潔の意味合いを再認識するために
男女共に、「4項目」の実践を提言。


 お互いを知り、気持を通わす行為としての性生活は必要だと考えられます。しかし、女性の身体をいかに守り、可能な限り健康な子孫を残すのかは、とても重要なことです。性感染症の予防は、女性だけの問題では済まされなくなつてきています。
 そこで最後に、「小医は病を癒(いや)し 中医は人を癒し 大医は国を癒す」という中国の諺(ことわざ)を紹介します。医療の現場では、症状から検査をして治療をするのが基本です。しかし、この諺の観点からいいますと、道徳教育を復活させることのほうが遥(はる)かに大切だといえます。
 全ての性感染症から身を守るためには、他の噛乳類(ほにゅうるい)とは異なる人間特有の、本来あるべき性生活を心がけることです。
 不特定多数との性行為によって遺伝子が傷つく、免疫応答の混乱を招くという報告もあります。望まない妊娠による中絶、できちゃった婚、子どもの虐待などの増加も、乱れた性生活が一因と考えられます。
 そこで「純潔」 の重要性を提言します。純潔を、古臭い、死語と一笑せずに、今こそ本来の純潔の意味合いを再認識する必要があると考えます。それには、次の4項目から始めましょう。
@性の重要性を家庭で教える。
 具体的には、女性には社会の 母体であるとの自覚と純潔の尊さを、男性には女性の身体をいたわる重要性を教える。
A性感染症の知識と予防具の使用を勧める。
B性感染症に罹(かか)ったら根治するまで治療を続ける。
Cパートナーの限定とお互いを思いやる気持の教育。
 一般には、STDに対する意識革命にはほど遠いものがあります。その甘い性感染症への認識を改めるためにもこの現実を知り、また一つは純潔教育の重要性、女性は母親になり子を育てる母体であるとの認識を、倫理教育として男女ともに見直すことを提言します。