診療室から Vol.32 不整脈
脈の異常や失神を自覚したら 一度は循環器内科の受診を
不整脈は頻脈と徐脈の二つのタイプが。
しかし、症状も治療も大きく異なる。


 急にドキドキと脈が速くなった、脈が飛ぶ、脈が乱れる、あるいは、目の前が暗くなって意識が遠のいた、失神した。このような症状の多くは、不整脈が原因のことが多いです。今回は、不整脈について記します。
 不整脈は大きく分けて、頻脈(ひんみゃく)(脈が増える、乱れる)と徐脈(じょみゃく)(脈が少なくなる) とに分かれますが、この二つのタイプは、症状も治療も大きく異なります。まずは頻脈から説明します。
 不整脈かどうかを判断するポイントの一つは、脈が速い、乱れているかに加え、規則正しく拍動しているかを診ます。
 ところが、実際に測定すると速度も普通で規則正しく打っているにもかかわらず、動悸(どうき)を感じるという場合があります。これは、高血圧や精神的な原因が考えられます。また規則正しく動き、かつ達い場合は、心臓そのものに原因があるのではなく、貧血や甲状腺機能異常、発熱、服用中の薬が原因のケースもあります。
 心臓がリズムを刻む、その元を洞房結節といいます。ここの機能がやや亢進(こうしん)すると、運動時のようにだんだんと脈が速くなりますが、ほとんどの場合、特に治療の必要はありません。また、突然スイッチが入ったように動悸が始まる場合は、発作性頻拍といって、治療を要する疾患のことが多いです。
 心臓に原因がない場合の動悸には精神的なもの、貧血、発熱、薬(気管支拡張薬、抗精神薬、抗うつ薬、抗生物質、抗アレルギー薬、総合感冒薬など)、嗜好品(しこうひん)(アルコール、喫煙、コーヒーなど)が挙げられます。動悸を自覚した時、以上をまず確認しておくことです。
 一方、心臓に原因がある動惇は、脈、リズムに異常があります。心臓の中に、心臓の電気的興奮が伝わる刺激伝導系という「道」があります。ここに何らかの異常が生じると動悸が発生してきます。
 心臓の電気的興奮が、あたかもサーキット場を車が廻るように、グルグルと回路を廻り続ける、リエントリーといわれる現象があります。リエントリーによる動悸は、始まる時、止まった時がはっきりとしているのが特徴で、心臓が原因である動悸の中では多いと思われます。
 診断には、症状や家族歴を間う問診と、心電図、胸部写真、採血、心エコーなどを行ないます。ホルター心電図(24時間心電図)もしばしばなされます。採血ではBMPという心不全の指標や、電解質異常などを主にチェックします。
 治療法は、薬物投与やカテーテルを心臓の中まで入れ、心筋の一部を焼灼(しょうしゃく)するアプレーションという不整脈の根本的治療をめざす方法もあります。


徐脈の治療は必要な例と不必要な例が。
前者の場合はペースメーカーを挿入。


 脈が少なくなる徐脈の主な症状は、めまい、失神ですが、耳鼻科的疾患のメニエル病でも、天井が廻る、物がゆがんで見えます。また自律神経の乱れによっても、めまい、失神のほか、脈が速くなったり遅くなったりを繰り返したり、生あくびが出たりします。立ち上がった時にふらつく、失神などの起立制低血圧も自律神経障害が多いです。
一方、循環器関連疾患では、目の前が暗くなる、あるいは白くなるなどの自覚症状が多く認められます。突然起こり、短い
時間に繰り返す、時に失禁や痙攣(けいれん)を伴うと、不整脈が強く疑われます。
 また洞房結節の機能が弱っている洞不全症候群、あるいは、刺激電導の途中に問題があり電気刺激がうまく伝わらない(ブロックされる)房室ブロックという状態が徐脈を生じ、めまい、失神を起こします。診断にはやはり心電図、ホルター心電図が有用です。
 徐脈には、治療が必要なケースと不必要なケースに分かれます。前者の場合は人工ペースメーカーを胸に埋め込みます。定期的にペースメーカーチェックを行ない、約10年で電池の入れ替えをします。
 ペースメーカーを挿入することで、自分の脈が少なくなると人工ペースメーカーが働いて脈の補充を行なうために、徐脈によるめまいや失神が防げます。ちなみに、ペースメーカーを挿入すると身体障害1級となり、各種の補助が受けられます。


不整脈の中で最も多いのが心房細動。
40歳過ぎから増え、抽惟患数は約75万。


 心房細動の疾患は、不整脈の中でも最もポピュラーな疾患です。男女差は特になく、40歳を超えると増え、日本では約75万人が罹患(りかん)していると考えられています。一定の決まったリズムを刻むのが心臓の本来の拍動ですが、全くバラバラなリズムを刻むのが特徴です。
 基礎疾患、例えば心臓弁膜症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞(こうそく)など)、心筋症、甲状腺機能克進症などがある場合と、全くない場合があります。また、高血圧や糖尿病の人は、心房細動を誘発しやすいので要注意です。
 また心房細動は、自然に停止し再発を繰り返す発作性心房細動と、自然には停止しない持続性心房細動に分かれます。
 心房細動で一番の問題は、心臓の中に血栓ができやすく、その血栓が元となり脳梗塞や全身性塞栓症(そくせんしょう)が起きやすいことです。したがって、治療にも血栓の予防が重視されます。
 検査としては、心電図は診断そのもののために行なわれますが、時には24時間心電図を行なうケースもあります。そして心機能、血栓の有無を調べるために心エコーを行ないます。またより観察するために、経食道心エコーが行なわれることもあります。
 治療は、まず普通のリズム(洞調律)に回復させる治療をしますが、リズムが戻らなくとも、心拍数をコントロールするケースも増えてきています。いずれにしても、まずは内服薬での治療がほとんどです。
 そして血栓のリスクの高い人、例えば高年齢、糖尿病、高血圧、弁膜症、過去に脳梗塞を患った人、心機能低下の人には、血栓予防薬が投与されます。
 近年は薬が効きにくい心房細動に対して、心房細動の発生の大本である肺静脈に、カテーテルを挿入して熱を加えるアプレーションという治療も増えてきています。ただこの治療は、まだまだ限られた施設でしかでき
ません。
 以上、不整脈でかなりの割合を占める心房細動について特に記しました。
 不整脈には遺伝性もあり、不整脈に関連する遺伝子もどんどん発見されています。脈の異常を自覚した、あるいはめまい、失神などを体験した人は、循環器内科の受診を勧めます。