診療室から Vol.28 3Dと眼
話題の3Dテレビ、ゲーム 8歳未満の子には要注意!!
生後、お母さんの口が見える眼は
8歳頃で、機能の全てが完成する。


 昨年は3D (立体映像) テレビが、今年2月末には3Dゲーム機が発売され、3D映像が、いよいよ家庭に入る時代になりました。
 今回は、私達が立体映像をどのようにして見ているのかについてです。
 情報を得る手段として、新聞、ラジオ、テレビ、インターネットなどがありますが、これらの約8割が眼から入ります。また読むだけではなく、たとえば野球をしていてボールを打つ。この場合、投手が投げたボールを眼が捉え、瞬時に脳に伝わり、脳が映像を処理し、ボールを打つ行動に出ます。この速度は0・2秒程度です。
 その眼の構造は、ビデオカメラのように画素子(視細胞)への刺激は処理されて、視神経を使って脳に送られ、脳からの指令で筋肉を動かしています。
 では、なぜこれらのことが可能なのでしょうか。人間の眼には、次のような能力があります。
@文字を読む………………………視力
A遠、近の物が見える……………調節力
H光を感じる………………………光覚
C色を感じる………………………色覚
D遠近が判り立体的に見える……両眼視・立体視
E広い範囲が見える………………視野
F暗い所でも動ける………………暗順応
などです。
 眼は、出生するまでは刺激がありません。眼の発達は、生後間もない赤ちゃんの視力は、0・03〜0・05で、お母さんの眼と口が見える程度です。生後3カ月では0・1くらいで7歳頃まで発達します。2歳くらいでは0・5程度に、3歳過ぎにはほぼ1・0になります。その頃の異常を早期発見するのが3歳児健診です。
 また眼は、視力と同様に、両眼視・立体視などが発達していきます。これらの機能は6歳頃までにほぼ完成し、8歳くらいまで発達します。特に2歳以下では外部刺激に対して強い感受性を持っています。


戦前から研究されて来た3Dが、
遂に家庭に上陸。しかし未だ課題も。


 ではどのようにして立体的に見ているのでしょうか? たとえば、机の上の3カ所にコップやビンを置き、左右の瞼(まぶた)を片方ずつ塞(ふさ)いで見ると、微妙に像が違うのが分かります。これを視差と言い、視差が立体視・遠近感の秘密です。この差を脳が解析して一つの像にまとめ(融像)て立体視をしています。
 3D映像技術は、この左右差(視差)の原理を利用して、立体視・遠近感を脳内で感じ取る仕組みです。しかし3D映像は、私達が日頃経験している立体視とは、全く異なるものです。
 私達の見ている像は、無限遠から近くまで全てが実像です。また両眼で一点を見るには、まず見て、左右の眼に映る像のズレを頭が感知し、眼を寄せる指令を出し、行き過ぎると戻します。これを繰り返すことで、ズレが絶えず生じないようにして立体的に見ているのです。
 しかし、3D映像の方法は、左右の眼に別々の平面像を見せて、それを脳で合成(融像) させる方法です。3D映像は、3次元の世界にいなくても体験できる素晴らしい技術です。飛行機の特殊訓練、医学の分野などに応用でき、技術系の夢です。
 3D映像は、戟前から色々な物がありました。特に1950年代頃からは、赤緑セロファンメガネをかけると飛び出して見える物が本の付録になりました。そして今回、2010年、特殊眼鏡とテレビ受信機で一気に拡がり、3D映像が家庭に入って来るようになりました。
 この原理は、テレビ側は、右の像、左の像を交互に映し出して点滅しています。一方、メガネのほうはそれに合わせて、右の像の時は左を黒くして右で見えるようにし、左の像の時は右を黒くして左のみを見せています。これは、各左右の像が頭で蓄積され、さも同時に見ているような錯覚を起こさせ、像を合成し疑似立体視するという仕組みです。


3Dテレビは、普通の画面に比べると
眼に負荷がかかり、種々の症状が。


 これら3D方式の問題点は、自然界にはない映像です。液晶画面は平面であり実像ではなく虚像です。ところが眼を周囲に転ずると、テレビの枠や家具などの実像が眼に飛び込んで来ます。そのため、脳は混乱します。
 また3D方式は、片眼ずつ見せるため、両眼同時の刺激ではなく、両眼分離と言われる見方をしていることです。また、平面の積み重ねの、立体の映像処理の問題もあるようです。
 過去に、テレビが原因で生じた障害として有名なのが「ピカチュー現象」です。1997年12月に放映された人気アニメ「ポケットモンスター」が、放映中にピカピカと画面が光り、病院に搬送された750人の内135人が入院しました。
 調査の結果、赤と青の連続切り替えやストロボ効果が光過敏発作を引き起こし、発作症状、頭痛、吐き気、気分不良などの症状が出たのです。しかし、他のテレビ漫画も同様の技法があり、多くの作品もが再編集されています。
 これと同様に、今回の3Dテレビも普通の画面に比べると、より眼に負荷がかかっているので、種々の症状が出やすいと言われています。実際に、3D映画を鑑賞した後に生じた「急性内斜視」が報告されています。
 年齢58歳の男性が、3D映画を観た後に違和感を感じました。検査すると、眼球運動は正常でCTでも異常はありませんでしたが、右眼に抑制(像を脳で消す) がかかってしまいました。暗所での長時間の両眼分離が、引き金と考えられています。
 また中には、最初から3Dテレビが上手に見られないという人がいます。それは、左右どちらかの眼に、遠視や近視、乱視があり、ある程度以上の屈折の差(不同視)がある場合です。
一方の目でピントが合っている時には他方がぼやけます。そのために今回のシャッター方式の3Dでは、片眼が使われなくなる可能性があります。また左右のズレで立体視の映像を作っているので、頭を横に傾けると縞模様が入ったり、立体感がなくなったり、ぼやけたり、にじんで見えたりします。
 現在の3Dは、片眼ずつの画像を脳で融像しています。斜視や片眼の弱視、正常な眼位や屈折を持っていない人には負担がかかります。そして、輻輳(ふくそう)(寄せ目)がしにくい人や、融像能力や焦点を合わす能力の低い人は二重に見えてしまいます。視力、立体感、遠近は、6歳である程度完成しますが、8歳頃までがとても大切な時期です。
 そこで重要なのは、視力などの発達時期に、自然界にない不自然な立体視を子供に経験させないことです。あるテレビの取扱説明書には、「3Dグラスでの視聴年齢については、6歳以上を目安にしてください。お子様が視聴の際は、保護者の方が眼の疲れが無いか、ご注意ください」と書かれています。また、大人でも船酔い感や不快感、頭痛を感じる人もいます。
 実は私も欲しいのですが、メガネをかけ、42インチの場合で1・5m離れて正面で視ることが推奨されています。今の私は仕事をしながら、チラチラと画面を見る程度のために、3Dテレビの購入は見合わせています。
 いずれ、より良い3Dが開発されるでしょうが、必ず首を傾けたりして試してから購入することを勧めます。