診療室から Vol.21 小児の発熱
子供が小さい時はかかりつけの小児科医を
発熱は病気に対する一種の防御反応。
発熱によって体内のウイルスが死滅。


 大学病院で小児科の当直をしていた頃、夜中にいろいろな電話がかかって来ました。
病棟の患者さんの容態が急変したという連絡や、緊急の帝王切開に立ち会いを求める産科からの電話もあります。また、外部からもたくさんの相談の電話がかかり、その中でも多いのが喘息(ぜんそく)の発作と、発熱でした。今回はこの発熱について記します。
 最近は核家族が増えて、「これくらいなら大丈夫だから」と、そばで励ましてくれる人がいない家庭が多いのも原因の一つでしょうか。
「赤ちゃんが急に発熱した」「昼間もらった解熱剤の座薬を投与したが、熱が下がらない」と言って、不安のあまり電話される方が多いようです。熱の下がらない子供を真ん中に、不安そうなお父さんとお母さんの姿が目に浮かぶようです。
 一般に、腋(わき)の下で測り37・5度以上の体温を発熱といいますが、実際は個人によって平熱に差がありますので、まずその子の平熱を普段から知っておくことが大切です。近年は、平熱が35度台という平熱の低い子供が増加しているそうです。
 よく電話で聞かれるのは、解熱剤をいったい何度で使用すればよいかという相談です。解熱剤は38・5度以上の発熱で、その上、機嫌が悪かったり、食欲の低下が認められる時に使用して下さい。元気で食欲もある場合には38度以上であっても、無理に使用する必要はありません。
 発熱は病気に対する一種の防御反応で、インフルエンザ・ウイルスなどはある程度以上の熱に弱いとされています。つまり、体が熱くなることにより、体の中のウイルスを殺す働きがあるといわれています。また、熱が上がりすぎて頭が悪くなるという心配はまずありません。
 解熱剤は使用してから普通は、30分くらいで効果が現れてきて、約4〜6時間有効とされています。
 高熱が出ている時は室温を快適に保ち、衣服はパジャマ1枚くらいにして、掛け布団もなるべく薄手の物を1枚程度でよいでしょう。厚着や布団でくるむと熱がさらに上昇することがありますし、電気毛布などは厳禁です。ただし、熱の上がり際はゾクゾクと震えがきますので、1枚多めにして下さい。
 そして、発熱時は水分をできるだけ多く与えるようにし、好むなら、氷枕や水で濡(ぬ)らしたタオルを頭部に当ててやると、冷たくて気持がよい場合があります。


病院でもらう解熱剤はよく効くが、
医師の説明をよく問いてから使用を。


 解熱剤を使用し、以上のような処置を行なっても熱が下がらない時があります。インフルエンザなどの非常に強いウイルスに感染した時や、2〜3歳までの、比較的体力のない時期に起こることがあります。
 そのような時には、寝ている首の周りや腋の下を冷やす
のもよいでしょう。アメリカではこういう場合には水風呂に入れるようですが、日本人の気質には合わないというか、親自身がなれていないのであまり賛成できません。
 病院でもらう解熱剤には何種類かあり、非常によく効きますが、副作用が問題になつている薬品もありますので、よくお医者さんに使用方法などを確かめて使うようにして下さい。
 6歳以下の子供では、脳の発達の関係で、38・5度以上の発熱に引き続いて熱性痙撃(けいれん)を起こすことがあります。3〜4歳では100人に対して6〜8%の確率といわれています。また、熱性疫攣を起こしやすい体質は、どうも遺伝しやすいようです。
 熱性痙撃を起こしやすい子供の場合は、迷わずに、38度を越えたら解熱剤を使用して下さい。あるいは予防薬を処方されている場合は、指示された体温になればその薬を服用させます。
 もしも、痙撃を起こしたら、あわてず静かに寝かせて下さい。口の中にスプーンやタオルなどは絶対に入れないで下さい。そのために窒息することがあり、非常に危険です。軽く横を向かせて、衣服がきつい場合には、ボタンなどをはずします。
 できたら、10分待って痙攣が治まらない場合や、何度も起こす場合は、直ちに病院へ連れて行って下さい。また、数分で治まり何度も繰り返さない場合は、翌日に病院へ連れて行くことでいいでしょう。しかし、どうしても不安な時は、迷わず先生に電話して下さい。


子供はいろいろな病気をするもの。
気軽に身内や小児科医に相談を。


 たいていの発熱は、ウイルス性の風邪が原因で、2〜3日で下がるのが普通です。ただし、次のような発熱の場合は特に注意して下さい。
1、発熱が5日以上続く
2、生後2カ月以内の発熱
3、原因がはっきりしない発熱
4、特に機嫌が悪く食欲もない場合
 いずれにしても、このような時に子供を連れて行って信頼して診てもらえる小児科の先生を、かかりつけ医としてしっかり持っておくことが何より大切だと思います。
 私には二人の息子がいますが、次男がしょっちゆう発熱し、小さい時には2回も風邪から肺炎になり入院しました。その当時は、小児科医の私が育てているのに、何故このような事が起こるのかと落ち込むこともありました。
 けれどもそのうちに、私にしか育てられないから私の所に神様が預けて下さったのだ″と思うようになりました。そうすると、急に気が軽くなりました。
 お子さんが熟をしばしば出しますと、自分の責任ではないか?″と、母親は自分自身を責めたりします。子供が小さい時は発熱したり、いろいろな病気をするものです。お母さんも大変だと思いますが、普通は年齢が上がるにつれてだんだんと丈夫になり、育てやすくなります。
 あまり深刻に考えないで、お子さんが、体調が悪くなったら、気軽に小児科医に相談する、助けてくれる身内の人がいれば甘えて、助けてもらうなどして乗り切りましょう。
 弱かった次男は、早いもので色グロのスポーツ大好き大学生で元気に過ごしています。たびたび発熱していた小さい頃がうそのようです。一人で大きくなったような、偉そうな顔をしています。
 今、大変なお母さん方にもきっと近い将来、そういう日が来ると思いますので、頑張って下さい。