診療室から Vol.19 結膜炎
手が介する感染症の結膜炎 家族のタオルはマイタオルを
昔は夏場に多く流行した結膜炎も
今は、温泉ブームで冬も罹患者が


 結膜炎は、夏はプールやスポーツクラブなどで、冬には温泉などでもらって来る人もいますので、昔ほど季節的な流行はなくなっています。
 結膜は、まぶた(眼瞼(がんけん))の裏側から黒目(角膜)の縁までを覆っている粘膜のことをいい、半透明で水分を含んでいます。そして、まぶたの裏側の結膜を眼瞼結膜、白目の表面の結膜を眼球結膜といいます。
 この眼瞼結膜は、角膜という黒目の上の透明なレンズを粘膜で保護し、擦れないようにしています。そして眼球結膜は、目を左右に動かす時には伸び縮みし、目の運動の妨げにならないように、また、眼球の後ろにゴミが廻らないようにしています。また眼球結膜は、角膜の周辺部に血管を張りめぐらして、角膜への栄養補給やムチンを分泌している重要な膜です。
 涙は耳側上方の涙腺(るいせん)で作られて、上眼瞼の奥から分泌され、目の表面の栄養の供給や、ゴミや老廃物の除去をしています。そして目頭のほうに流れ涙小点から鼻の奥に流れて行きます。
 その眼球結膜、眼瞼結膜が何らかの原因で炎症を起こし充血して目やにが出ることを結膜炎と呼びます。強い結膜炎では結膜の出血、光がまぶしい、痛みなどが伴います。また放置していると、透明な角膜に白い濁りを残してしまうこともあります。
 結膜炎は大別すると「感染性」と「非感染性」があり、さらに「感染性結膜炎」は、ウイルスによるものと細菌によるものがあります。まずは「ウイルス性結膜炎」から説明します。


感染力の強い流行眼は、外出の自粛と
手洗い、消毒の励行でうつさない努力を。


 ウイルス性の結膜炎の原因は、風邪と同じで飛沫(ひまつ)の接触感染です。ウイルスと呼ばれる細菌より小さな物、数種類が知られています。感染経路はタオル、ドアノブ、エレベーターのボタン、キーボードやつり革等々、人の触る所を介して伝染します。
 ウイルスの種類は多く、アデノウイルスと呼ばれる中にも数種類があり、肺炎や結膜炎を起こすものなどがあります。現在のところ有効な予防薬がないので、大勢の人に流行します。
 症状は、感染後3日から1週間くらいで出始め、約2週間で落ち着きます。その間は目を触った手はすぐに流水で洗って下さい。ウイルス性結膜炎は症状も強く、充血や目やにのために、起床時に目が開かないくらいになります。コロコロしたり、まぶしかったり、涙もよく出ますので、大変うっとうしいものです。また、まぶたが腫(は)れますが、冷やしたり、眼帯をすると長引くことがあります。炎症が角膜まで及ぶと長引き、角膜に混濁を残すこともあります。
 頸(くび)(耳の後ろ) のリンパ節の腫れや発熱が伴う場合は風邪と間違えられることもあります。症状が出始める前日には、涙の中にウイルスがいて感染力がありますので、家庭内でのタオルは個別にして下さい。
 また、症状のある間は目を触らないようにし、入浴や洗髪もできるだけ控える。入る場合は最後にして、その残り湯は洗濯や掃除に使わないで下さい。
 そこで人にうつさないためには、まず消毒です。ウイルスは乾燥や70度以上の熱で死にます。またアルコール消毒では5分で95%が死にます。塩素も有効で、オゾン水が一番強力です。ですから、流水でよく手を擦(こす)り、ドアノブなどはアルコールで拭(ふ)きます。箸(はし)などは湯通しを、茶碗は漂白剤に浸(つ)けます。タオル、枕カバーは熱湯をかけた後に普通に洗う、または太陽にさらして紫外線消毒します。
 流行眼(はやりめ)は感染力が強く、保育園、学校、仕事は休む必要があります。プールは禁止です。治ったように見えても、医師の許可が出るまでは、他所への訪問や家に招くことは控えて下さい。人の目薬や封の開いた目薬の使用もいけません。病院でも、外来に来た結膜炎の子供があちらこちらを触り、院内感染の原因になることがありますので、様々な所を触った手で目を触れないことが肝腎です。
 治療は、基本的には炎症を抑える薬と二次感染予防の抗生剤で様子を見る必要があります。点眼の際はティッシュを用い、使用後は燃えるゴミに出してすぐに手を洗って下さい。
 「細菌性結膜炎」は、人間の身体に常在している雑菌が、体調不良などの時に増殖するものです。感染性はさほど強くはありませんが、やはり要注意です。この場合は、抗生剤の点眼がよく効きます。
 この他には、出産後の乳児などに起こる淋菌(りんきん)性やカンジダ性の結膜炎があります。難治性ですので、少し特殊な抗生剤が必要になることがあります。
 「非感染性の結膜炎」の代表はアレルギー性の結膜炎です。原因は主にスギ、カモガヤ、キリンソウなどの花粉ですが、他にもコンタクト、ハウスダスト、家ダニ、犬猫の毛が挙げられます。隠れた物としては、プールの塩素、化粧品、シャンプー、リンスや、洗濯剤もあります。
 基本は原因の除去が一番ですので、いつからどのように生じたかを考えてみることです。例えば、プール後の症状ならゴーグルの着用、季節性の人は、その季節の前からの加療で悪化せずに過ごせます。
 まとめますと、感染性の結膜炎の予防は目を触らないこと。かかったら流水でよく手を洗い、タオルを別にして風呂で顔を洗わないことが大事です。また、非感染症の結膜炎は、原因の除去と予防治療が何よりです。


結膜炎の予防と水泳後の洗眼について。
目に異物が入ったらすぐに洗眼の習慣。


 一昨年、塩素を含んだ水で約1分間洗うと角膜に害があると報道され、学校現場や保護者が混乱しました。しかし、薬液などが目に入った時には、まず洗眼することが初期治療で大切ですし、様々な商品の注意書きにも書かれています。また、プール後の洗眼は結膜炎の予防のためにも大切とされ、文部科学省からも十分洗うように指導するとされています。その報告書には、短時間なら害もなく洗い流せることも述べられています。実際にプール後に1分も目を洗っている人はいません。
 この報告から、プールで長時間目を開けて泳ぐと、塩素により目の防御機能の低下が一時的に起こり、その傷に感染症が生じやすくなると考えられます。つまり、長時間楽しく泳ぐためには、アレルギーなどの疾患の増悪予防の点からも、ゴーグル使用が良いと思われます。
 学校のプールでもゴーグルの使用が良いでしょう。値段も下がり、子供用も充実してきています。また医師の診断書も基本的には必要はありません。学校の養護教諭の先生と相談されることをおすすめします。
 プール授業の本来の目的である水難時に目を開けて泳げないのも困ります。時にはゴーグルなしで目を水中で開けられるように練習するのは大切でしょう。「目に何かが入った時にはすぐに洗眼する」という、生活上の知恵を身につけるためにも、プール後の洗眼は良い機会ととらえて、おおらかに考えればいいと思います。
 プール後の洗眼は、長時間ではなく数秒間で十分です。より良い生活の知恵が身に付くと思います。