診療室から Vol.16 骨粗鬆症
骨折はさまざまな病気を誘引 若い時から骨を守る習慣を
元気な生括を続けていくためにも
骨を丈夫に保つことは大切なこと


 骨の密度が低下して骨折しやすくなる病気を「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」といいますが、骨粗鬆症と診断される人は、年齢とともに多くなり、特に女性では男性の約3倍多く見られます。
 これは、閉経後の女性ホルモンの分泌低下によるものです。女性では00歳代の後半から有病率が高くなり、80歳代では女性のほぼ半数、男性では約2〜3割の人が骨粗鬆症の状態であるといわれています。
 高齢者が多くなってきている現在では、骨租髭症の人も、骨粗鬆症が原因となって起こる骨折も増加しています。大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)骨折もその一つですが、転倒・骨折は、寝たきりになる大きな原因の一つです。元気な生活を続けていくために、骨を丈夫に保っておくことはとても大切なことといえます。
 骨粗鬆症の予防には、若い時から十分な注意をしておくことが重要ですが、中高年以降も、生活習慣に注意を払うことで、骨粗鬆症や骨折を予防することができると考えられています。
 骨を丈夫に保つためには、食事、運動、日光浴の三つの生活習慣がかかわってきます。


予防、治療のためのカルシウム源は
昔ながらの日本食での摂取を基本に


 まずは食生活です。骨粗鬆症の治療に、カルシウムの摂取が重要であることはよく知られています。そこで、カルシウムの多い食品を紹介しましょう。
 一般的には、カルシウムの含有量が多く、かつ吸収が良い食品の代表として牛乳が挙げられますが、私達日本人のように乳糖の分解酵素を持たない民族には牛乳は向きません。ですので、ここでは日本人が昔から食して来た食品で摂取することを勧めます。
・大豆、納豆など豆類
・木綿豆腐(絹ごしよりカルシウム含有量が多い)、がんも、厚揚げなどの大豆製品
・ほうれん草、小松菜、チンゲン菜などの青菜
・海藻類
・シシャモ、丸干しイワシ、しらす干し、干しエビなどの小魚類
 骨粗鬆症を予防するためには、一日600mgのカルシウムが必要とされています。しかし振り返ってみると、実際には摂(と)れていないことが多いです。たとえば、1回の食事で200mgずつ摂取しようとすると、木綿豆腐200g(約1丁)=240mg、納豆200g(5パック)=約180mg、小松菜140g=約200mg、シシャモ60g(中3尾)=200mgとなります。
 また骨ごと食べられる、小魚や干しエビなどを加えると、容易に増せます。いつものおかずに、青菜のおひたしや納豆、豆腐のおかずをもう一皿追加するなど、これらの食品を組み合わせるといいでしょう。色々な食品から摂取することで、他の栄養素についても併せてバランスよく摂ることにつながってきます。
 腸管からのカルシウムの吸収をよくするために、ビタミンDも大切です。特に高齢者では腸管からのカルシウムの吸収率が低下しますので、より積極的に摂り入れていくとよいでしょう。ビタミンDはサケ、サンマ、ウナギなどの魚類のほか、キノコ類に多く含まれます。
 また、納豆、ほうれん草、小松菜、ブロッコリーなどによく含まれるビタミンKも、骨の健康にかかわる大切な栄養素です。
 その他、適度なたんばく質の摂取も必要です。高齢者ではたんばく質の摂取が減ってくる場合も多く、それによって骨量が減少してくる可能性もあるといわれています。
 なお、これらのいろいろな食品の摂取を心がけるにあたって、糖尿病、高血圧症、高脂血症などを患っている人は、カロリーや脂肪分の摂りすぎなどに注意が必要です。
 どのような食品を摂るかに加えて、一日3回、きちんと食事を摂ることが大切であることも付け加えておきます。


食品やその他で摂ったカルシウムは
運動と日光浴で、さらに丈夫な骨に 


 次に運動についてです。たとえば宇宙の無重力の状態では、骨も筋肉もあまり使わないため、骨董は減り、もろい骨となってきます。そのため、長期滞在の宇宙飛行士は、予防のために、運動や予防薬などの対策をするようです。また、寝たきりの状態が長い人の場合も、骨や筋肉を使わなくなり、程度は異なりますが、同じようなことがいえます。
  そこで適度な運動をすることによって、骨量の減少を防ぎ、骨量を維持したり増すことができます。また運動によって、筋力が鍛えられ、転倒の予防にもなり、骨折の防止にもつながってきます。たとえば、ウオーキング程度のものでいいのです。
 可能であれば、縄跳びやジョギング、エアロビクスなどもよいようです。
 骨粗鬆症になった高齢者に多くみられる、腰椎圧迫骨折の予防には、背筋を鍛える運動も有効です。日常生活の中で、たとえば階段の昇り降りや、家事の動きなど、活動的に生活することも、運動と同じように、骨に対して効果的といえます。
 最後に日光浴です。ビタミンDの必要性については食生活のところでも書きましたが、食品として摂取するほか、日光浴をすることによって、体内でビタミンDを作ることができます。
適度に日光を浴びることが骨の健康に役立ってきます。
 過度に紫外線を浴びることはよくありませんが、帽子をかぶって、木陰で過ごす程度でも骨にとっては十分な日光浴になるようです。天気のいい日に、ゆったりとした気分で散歩を楽しむ、こんな時間が持てると骨の健康のためにはとてもいいようです。
 骨粗鬆症に罹(かか)っているかどうかは、病院や保健所などで骨量測定検査を受けてみてください。骨密度が、若年成人平均値の70%未満であれば「骨租軽症」、70〜80%ならば「骨量減少」と診断されます。このように診断された場合は、より一層注意が必要になってきます。
 場合によっては予防の薬を投与されることもあります。薬物治療を行なうかどうかは、年齢、骨密度などの判断基準のほか、これまでに骨折をしたことがあるか、家族に大腿骨頚部骨折の人がいるかどうかなども参考とされます。
 また、アルコール摂取の多い人(日本酒で一日2合以上程度)、喫煙なども骨折の危険因子となり、薬物治療が必要となってくる場合もあります。
 骨粗鬆症を予防し、骨を守る生活を心がける目的は、骨折を防ぐことです。骨折により現在の生活を維持できなくなったり、寝たきりになってしまうことは、その他のさまざまな病気を起こすことにもつながってきます。
 若い人から高齢者まで、骨を守る習慣を少しずつ心がけていきましょう。