診療室から Vol.10 弱視ってなあに?
弱視の矯正、治療は幼稚園世代が大きなカ
視力の弱い生まれたての赤ちゃんには
フランス人形よりもドラえもんを。


 人間の目にはいろいろな能力があります。「文字を読む・視力」「色が判る・色覚」「夜道を歩ける・暗順応」「物の遠近が判る・立体視」「横から来る物が見える・視野」などです。弱視とは、いろいろな原因で視力の発達がうまくいかなかった時に起こります。今回は視力の発達について考えてみましょう。
 生まれたばかりの赤ちゃんの視力は、0・03〜0・05と言われ、お母さんの目と口が見える程度です。生後3カ月になると0・1まで見えるようになり、6カ月ぐらいで0・2程度に発達すると言われています。
 そのため、赤ちゃんは美しいフランス人形よりも、目や口の大きなドラえもん、やだもん、オバQなどの特徴的な人形を好みます。その後、2歳で0・5、3歳でほぼ1・0と発達していきます。
 つまり人の視力は、この世に生まれて、光が網膜上にピントが合うことで見ることを覚えます。さらに、ピントを合わすことを覚えることによって脳が発達していきます。また、人間の目は左右二つあり、両目で物を見ることにより、遠近感や立体感が得られます。この機能を両眼視機能と言います。この機能も同時に発達していきます。
 見る機能は、正常に網膜への刺激が行なわれる中で発達し、生後3カ月から3歳までかかってゆっくり発達していきますが、特に2歳以下では、この外部からの刺激に対して最も強い感受性を持つと言われています。そして、視力及び両眼視機能は8歳ころまで発達し続けます。


視力の発達不十分な状態を弱視と言うが
その原因により種類もさまざま。


 弱視とは、視力(矯正視力)の発達が不十分な状態のことで、原因はさまざまですが、大きく分けて次の通りです。
【斜視弱視】
 斜視とは、片目の視線が内側や外側などにずれている状態です。左右交替にずれて視力が発達する時もありますが、斜視になる目がいつも決まっている場合、二つの像が頭のほうに送られるため、必要なほうの情報のみを利用することになり、使わないほうの視力は育たず弱視になります。
【不同視弱視】
 目の左右の一方に、生まれつきの遠視や近視、あるいは乱視があり、ある程度以上の屈折の差があるものを不同視と言います。
 例えば、右目が強い遠視や乱視の場合、左目でピントが合っているために右目はぼやけます。
そのため、右目はしだいに使わなくなり弱視となります。特に強い遠視は要注意ですが、近視の場合は近くでピントが合うので弱視になりにくいです。
【屈折異常弱視】
 両目に強い遠視や乱視があると、両眼ともピントが合わず育ちにくいため弱視になりやすいです。
【形態覚遮断弱視】
 先天性白内障や先天性眼瞼下垂(がんけんかすい)(まぶたが下がり黒目をおおっている状態)、外傷などでの乳幼児期の眼帯装用などで、片方の目がふさがれた時に起こります。やはり像がその目に入らず刺激がいかないので、発達を阻害されて弱視になります。そのため、子供に眼帯を掛ける場合、両目にすることがあります。


お母さんの力が大きい弱視の発見。
目つきなどの異常を感じたら受診を。


 このように、弱視の原因はさまざまですが、それを防ぐためには、早期発見、早期治療が重要です。また、視力の発達期間、特に幼稚園世代に治療を集中して行なうことが必要です。発達期間を過ぎてから治療を始めても、視力は発達しません。ここが非常に重要なポイントです。
 しかし、普段からのしぐさや行動で、お母さんが気づくこともあります。例えば、斜視を伴う場合は、目つきがおかしい・視線が合わない・片目をつむるなど……。両目の場合は、テレビや絵本を近づいて見る。目を細める。落ち着きがない。細かい遊びにすぐ飽きるなどです。
 片目の場合は、一方の目が見えているためになかなか気づくことが難しいのですが、正常な目を隠すととても嫌がります。
「いないないばあ」などの遊びの中で片方の目を交代で隠し、嫌がるようなしぐさが見られれば注意が必要です。しかし、日常では発見されないことも多いので、日本では早期発見するために、3歳児健診が実施されています。
 3歳児健診での目の検査、治療は次のようなものです。
 治療は原因により異なりますが、まず正しい屈折検査が必要です。しかし、子供はそれまでに視力の検査を受けたことがありませんので、待っている間に寝てしまう子、逃げ出す子、人見知りする子などいろいろです。まずは、気長に通って医師や検査員と親しくなり、視力の検査になれることが大切です。
 また子供の特徴として、調節力(ピントを合わせる力)が非常に強いことがあげられます。
 正しい屈折を検査するには、調節麻痺剤(まひざい)を点眼して1時間ほどおき、調節を麻痺させた上で視力検査をします。そこで強い屈折が認められた場合は、速やかに眼鏡などにより屈折を矯正して網膜にピントを合わせる必要があります。
 斜視が原因の場合、良いほうの目をアイパッチ(眼帯)で隠して、視力の悪いほうの目を使うよう訓練します。斜視の手術は、普通は悪いほうの目が発達した後にしますが、先に手術する場合もあります。
 片目だけ弱視の場合は、眼鏡をかけて、さらにアイパッチで片目を隠します。両目が弱視の場合は眼鏡をかけてゆっくり視力を発達させます。
 先天的な眼科疾患の場合は、早期に発見し、治療しても治らない場合もありますが、良好な治療結果が期待できることもありますので、瞳(ひとみ)が白く見える、まぶしがる、目がゆれる、目つきがおかしいなどの様子が見られたら、3歳児健診を待たずにまず早期の受診が大切です。