診療室から Vol.09 便 秘
「一口に便秘」と言えない便秘 便秘には、色々な種類と原因が
便秘は発症の仕方で慢性と急性に大別。
特に女性が悩むのは「慢性機能性便秘」


 皆さんは、快眠、快食、快便の毎日を過ごしていますか。今回は「便秘」についてです。
 私達の体内の老廃物や有害物質は、約75%が便によって排泄(はいせつ)されると言われていますが、便秘とは、その糞便(ふんべん)が大腸内に長く停滞する状態を指します。具体的には、3日以上排便がない、または毎日排便があっても、スッキリ出ないなどの残便感がある状態です。
 便秘をすると、腸内細菌のバランスが崩れます。その結果、善玉菌が減って悪玉菌が増えるため、有害物質の生成やガスが発生し、免疫力低下など、身体に悪影響を及ぼします。最近では、腸内細菌のバランスの崩れが、アレルギー疾患を引き起こすことも判ってきました。
 便秘の症状としては、便が出ない以外に、腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹部膨満感、めまいなどを伴うこともあります。
 一口に便秘と言っても、色々な種類があり、発症の仕方で急性と慢性に分けられます。さらにその原因によって、「機能性便秘・腸管の緊張や嬬動(ぜんどう)運動の異常」と「器質性便秘・大腸に慢性腸炎、腸閉(へいそく)塞、ガンなどの病気による腸管の狭窄(きょうさく)」があります。この中でもっとも普通に見られる便秘は「慢性機能性便秘」で、多くの女性を悩ませているのも、この機能性便秘です。今回は主に、この「慢性機能性便秘」について説明します。
 機能性便秘の中でも多いのは、腸管の運動が低下する「弛緩(しかん)性便秘」です。高齢者や多産婦、寝たきりの生活をしている人、また、食事の摂取量が少ない人にも見られます。
 症状としては、便は太くて硬い。お腹が張るわりには便意が弱く、腹痛も少ないことが特徴です。
 次は腸管の運動や緊張が異常に高まる 「痙攣(けいれん)便秘」 で、若年者に多いのが特徴です。
 便意が強いのに排便できず、便は小さくて硬く、うさぎの糞のようになり、左下腹痛が多いです。めまい、頭痛、肩こり、不眠、動悸(どうき)などの自律神経失調症も伴いやすいです。ストレスによって起こる過敏性腸症候群に似た便秘と考えられています。また、下痢と便秘を繰り返す場合もあります。
 最後は便が肛門(こうもん)近くの直腸内に送られても、排便の起こらない 「直腸性便秘」です。これは便意を我慢する習慣の人や、浣腸(かんちょう)の檻用(らんよう)により直腸粘膜の反応が鈍くなった人に見られます。
 排便時に残便感や便が出にくいなどの症状があり、便は硬く小さく、弛緩性便秘と合併する場合が少なくありません。便秘が数年前から始まり、特に悪化しなければ機能性便秘が考えられます。
 また、別の病気の治療薬の中には、鎮痛剤、鎮静剤、抗うつ剤、カルシウム剤、制酸剤、鉄剤などの副作用として便秘を起こすものがあります。高齢者は、複数の薬剤を併用している場合が多いので要注意です。


便秘薬や浣腸の使用はあくまでも一時的。
便秘解消の第一は、自らの生活習慣の改善。


 便秘の治療としては、まず規則的な排便の習慣をつけることです。便秘は生活習慣病の一つでもありますので、早寝、早起きをして、朝食もしっかり摂(と)ることです。食事をすることで腸の蠕動運動が始まり、便意をもよおすという胃・結腸反射が起こります。便意を感じたら我慢をせず、すぐにトイレに行くことです。
 我慢をしてしまうと、大腸内に停滞した便から、どんどん水分が吸収されて便が硬くなり出にくくなります。また、我慢し続けると、直腸の感覚が麻痺(まひ)し、便意を感じにくくなります。その結果、ますます便秘を重症化させてしまいます。
 次に毎日の食事では、豆類、麦や胚芽精米などの穀類、芋類、キノコ類、海藻類、果実類など和食中心の、食物繊維の多い食品を摂ることです。特に弛緩性便秘では、朝食前に冷たい水や果汁を摂ると良いでしょう。
 ただし痙攣性便秘には、以上の物は胃腸を強く刺激するので避けます。野菜類も加熱して繊維を柔らかくして消化を良くしたり、熟した果実類や南瓜、寒天などがお勧めです。
 また、ヨーグルトや最近流行のケフィアなどの乳製品は、腸内の善玉菌を増やします。逆にお菓子の食べ過ぎは、大腸内の水分を必要以上に吸収して、便秘を悪化させるので責任意です。
 さらに、体操や散歩など適当な運動をしましょう。運動不足は胃腸の動きを弱めたり、腹庄がかけられないなどによって便秘になりやすいのです。便秘を改善するためには、特に腹筋を鍛える運動が効果的です。あるいは腹部をゆっくりと、時計廻りにマッサージするのも良いでしょう。
 以上のことを試しても効果の少ない時は、下剤などの薬剤も併用します。ただし下剤には習慣性があるので、適切な医師の指示の下で、作用の穏やかなものをできるだけ少量、しかも短期間に限って用いることです。
 また、浣腸に頼ることも腸管の機能低下を増悪させます。浣腸液にはグリセリンが含まれており、これが血液の中に入ると、溶血を起こして急性腎不全となって命の危険もありますので、そういう意味でも浣腸をむやみやたらに使用しないことです。
 薬や浣腸は、あくまでも一時的に使用することが望ましく、依存するとやめられなくなる恐れがありますので、ご自分の生活習慣を見直すことが大切です。


日頃から便の色や臭いなどの形状を観察し
異常を感じたら、必ず医師の受診を。


 次に問題となるのは「器質性便秘」です。これは先天性と後天性に分けられますが、日頃よく見られるのは、後天性のほうです。すなわち、大腸ガンやポリープ、潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、腹部手術後の腸管癒着(ゆちゃく)、消化管以外の骨盤内臓器のガンなどがあります。また、肛門に痔(ぢ)など何らかの異常がある場合もあります。
 これらは、症状の重症度によって、手術や内服薬など積極的な治療を必要とするものがほとんどです。便秘以外の症状を伴うことも多いです。比較的最近に始まった便秘や普段と異なる症状を伴う場合は、速やかに検査を受けることをお勧めします。
 ここまでは慢性的な便秘について記しましたが、比較的急性に起こる便秘もあります。排便のリズムは、ちょっとしたことで変わります。すなわち食事内容の変化、旅行、運動制限、水分不足、心因性などで一過性に便秘が起こります。しかし、これらは特に心配のないものです。
 心因性の痙攣性便秘の場合は、精神科や心療内科で適切な生活指導を受け、下剤と共に精神安定剤などによる治療を受けます。
 排便はできるだけ毎日あるほうがベストです。基本的には、「規則正しいバランスの良い食事」「規則正しい睡眠」「規則正しい排便」 の習慣を身につけることが健康に過ごすために大切です。
 日頃から自分の便の状態(色・臭い・形・硬さ・血液混入の有無など) を観察しておくことも、異常の早期発見に繋(つな)がります。服用している薬剤によっても便の性状は変わります。便に異常を感じたら、まずは生活を振り返り、明らかな原因がなければ一度医師を訪ねて下さい。