診療室から Vol.08 血糖値の話
ご存知ですか?特定健診項目のHbA1c・ヘモグロビンエーワンシーを
「糖尿病」判定の基準となる血糖値。
この数値は、食事の度に上下する。


 今回は血糖値について説明します。健康診断や病院の定期検査などで血糖値を測ることがあると思いますが、その時「ちょっと高いようですね」と言われたら皆さんはどうしますか? そもそも血糖値は食事をすると上がり始め、食後60分くらいがピークとなって、その後徐々に下がります。私達の身体は、食事の度にこれを繰り返しているのです。また、食事の合間に仕事や家事、運動など、身体を動かすことでエネルギーを消費し、血糖値は下がります。
 一言で血糖値と言っても、食事をする前に測ったものと、食事をしてから、しかも食後何時間経ったかによって、血糖値の判断は大きく変わります。
 まずは正常値について説明しますと、一般的には、空腹時(食事前) の血糖値は80〜110mg/dl、食後2時間では80〜140mg/dlくらいが正常値として設定されています。
 これに対し、空腹時で126mg/dlを超えている、または時間にかかわらず、200mg/dlを超えている人は「糖尿病型」と判定されます。これに当てはまる場合は、医療機関などでもう一度検査を受けて下さい。そして同じ結果であれば糖尿病と診断されます。
 早朝空腹時の血糖値が110mg/dl以下の人は「正常型」と判定されますが、この早朝空腹時の血糖値が126mg/dlは超えないが、正常の110mg/dlよりは高いという人は「境界型」と判定され、場合によってはブドウ糖負荷試験を受けることもあります。
 75gのブドウ糖を溶かした砂糖水を服用して、その後の血糖値の変動を30分、1時間、2時間と測定する検査です。この時、やはり砂糖水服用前に126mg/dl、2時間後に200mg/dlを超えてしまう人は「糖尿病型」と診断されます。最初の結果と合わせて、2度の「糖尿病型」で糖尿病と診断されます。
 1回の検査で「糖尿病型」と判定された場合でも、口渇、多飲(やたらよく飲む)、多尿、体重減少などの典型的な症状がある、他の臓器に明らかな糖尿病の変化が出ている場合(糖尿病性網膜症)、過去に「糖尿病型」を示した検査結果がある場合、同じ時に測ったHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6・5%以上の場合などは、その時点で糖尿病と診断されます。


血糖値は正常でも、HbA1c値が高いと、
数カ月の暴飲暴食の生活が読み取れる。


 さて、このHbA1cという値は、血糖値や糖尿病の話をする際に欠かすことのできない大事な検査項目です。糖尿病などの生活習慣病に着目して、昨年の4月から導入された特定健診においても、新たに糖尿病の検査項目として取り入れられています。しかし、大切な検査項目であるにもかかわらず、この項目について知っている人は、意外に少ないようです。
 そもそもヘモグロビンというのは、血液中の赤血球に含まれる血液の赤い色の元で、酸素を運ぶ重要な役割を果たしています。このヘモグロビンに、血液中の糖やその代謝物質が結合したものをグリコヘモグロビンと言い、そのうち、特にグルコース(血糖)が結合したものをHbA1cと言います。
 血糖値が高い状態が続いていると、血糖と結合しているヘモグロビンもその分多くなってきますので、血糖値が高いとそれに併せてHbA1cも同じように高くなってくるわけです。
 赤血球の寿命は約120日とされており、採血した血液の中には新しいもの、古いものと、色々な赤血球が混ざり合わさっていて、測定したHbA1cは、おおむね、その時点の約4〜2カ月前の血糖値の平均した動きを表すものとされています。
 ではなぜこの値が大切なのでしょうか? 例えば、外食続きの暴飲暴食の生活が続いていた人が、病院で検査を受けるために数日間食事制限をして受診すると、その時の血糖値はひょっとしたら正常値に戻っているかもしれません。しかし、同時にHbA1cを測定すると高値を示していた。すると、この数カ月、無茶な食生活で血糖値が高くなったことが分かるわけです。
 このHbA1cも正常値を覚えておきましょう。血糖値と違って、単位は%です。正常値は5・8%以下(特定健診では5・2%を超えると、なんらかの指導を受ける)、6・5%を超えるとほぼ糖尿病と診断されます。
 これは、現在糖尿病の治療を受けている人にもとても大切な数字です。月1回程度、受診時にこれを測定することで、良いコントロールが保たれているのか、あるいは、もう少し注意が必要かが分かります。また内服薬やインスリン製剤など、薬剤による治療を受けている人であれば、投与量の調節の指標の一つにもなります。


検査で自分を知ることも大切だが、
一番は生活習慣の改善。特に食生活を。


 さて、初めて血糖値が高いことに気づいた人、病院で受診をし、自分の現在の状況を知ること、他の病気の影響がないかなどを調べてみることも大切ですが、毎日の生活で一番に振り返ってみるべきは、食事、運動などの生活習慣です。特に食生活は何よりも重要なポイントです。
 血糖値を正常に保つ食生活の基本は、「一日3食をきちんと摂(と)って(八分目)、夜食、間食を控える」です。ちょっとした要点に気をつけるだけで血糖値が改善される場合もあります。
 例えば飲み物です。「ペットボトル症候群」という言葉もありますが、清涼飲料水の飲み過ぎで急激に血糖値が上がり、糖尿病にかかることもあります。いよいよ夏本番です。冷たい炭酸飲料や甘いジュースなどをむやみに飲み続けることは要注意です。
 また意外な落とし穴としては、スポーツドリンク、それから野菜ジュースなどにも糖分が多く含まれているものもありますので、十分気をつけてください。
 その他、季節のおいしい果物があると食べ過ぎてしまうこともありますね。果物は、ビタミンやミネラルなどが含まれた良い食品ですが、量を過ぎると、糖分過多になってしまいます。
 その他、四六時中アメやガムを口にしているという人など。何か思い当ることがある人は、それを改めることで血糖値が改善される可能性は高いです。
 「血糖値が高い」「糖尿病」と言われると、たちまち、あれもダメ、これもダメ、何も食べられないと沈みがちになる人もいますが、基本的には、食べていけない物はありません。
 野菜を多く含んだ色々な種類の食品をバランスよく摂る工夫、賢く食べる。そんなふうに考えてみましょう。一日3食。きちんときれいな食事を心がけることは、糖尿病のみならず、様々な病気の予防につながっていきます。食事は薬餌(やくじ)、少しずつ気をつけていくことで、毎日を元気に過ごしたいものです。