診療室から Vol.07 薬の種類と服用
薬を正しく理解し、服用は正しい時に、正しい量を
薬の形の違いには大事な意味が。
カプセルを開けての服用は厳禁。


 皆さんは、薬にはどのような種類があるかご存知でしょうか? 薬は、認可・販売の時期や、販売の方法、そしてその形状など、非常に多くの種類に分類されます。
 国内外の製薬会社を問わず、新たに認可され販売許可を受けた「先発医薬品」、先発医薬品の特許が切れた後に製造販売される「後発品」 (ジュネリック医薬品)、医師や歯科医師からの処方箋(しょほうせん)が必要な「医療用医薬品」と、処方箋の必要がない「一般医薬品」があります。
 これらに加え、治療目的では成分含量が少ないために用いることができず、主には予防などの目的に使う「医薬部外品」と表示されている製品もあります。
 また、種類と言えば、薬の形も「錠剤」「顆粒(かりゅう)剤」「カブセル剤」「液剤」など様々です。皆さんも一度に何種類かの薬を渡された時に、散剤や錠剤など様々な形の薬を手にして「全ての同じ錠剤なら服みやすいのに」と感じた人も多いことと思います。しかしこれは、ただ薬の形が違うだけではなく、とても大事な意味があります。
 通常、薬は非常によく溶けるように作られていますが、錠剤や顆粒剤の一部は、医薬品の成分が少しずつ溶け出し、徐々に効き目が現れる(徐放性)ように工夫されていて、作用の持続性を持たせてあるものがあります。これを潰(つぶ)すと、その徐放性という特徴がなくなります。
 また薬の中には、胃の中で溶けると効き目がないもの、胃腸障害を起こすものがあります。
このような薬は、カプセル剤などにして、胃ではなく、腸で溶けて作用が発揮できるようにしてあります。
 このように、医薬品はその形(錠剤、カプセル剤など) において、品質、有効性、安全性が確保されていますので、原則的にむやみに潰したり、カプセルを開けて中身を取り出したりしてはいけません。


薬は自分勝手な服み方をせず
医師や薬剤師の指導通りに。


 薬局で何種類かの薬を、「この薬は毎食後、こちらは食間に服用してください」と渡された経験はありませんか。薬をいつ服むか、それも薬によって様々です。
「空腹時に薬を服むと胃に悪いから、薬は食後に服むもの」と、思い込んでいる人も多いのではないかと思います。確かに、薬の中には胃に障害を与えるものもありますし、食べ物と共に服むことで、とても吸収が良くなるものがあります。
 しかしその一方で、食べ物と共に服むと、逆に吸収が悪くなるものもあるのです。高血圧や狭心症の治療薬であるカルシウム括抗薬(きっこうやく)は、グレープフルーツを一緒に摂(と)ると薬の作用が増強され、過度の血圧低下や心拍数の増加を起こします。
 また、納豆やホウレン草などの緑黄色野菜は、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、血栓(けっせん)などの治療薬の働きを弱めてしまいます。よって、自分勝手な服み方をせず、医師や薬剤師からの指導をしっかり守り、服用することがとても大切です。
 薬は、コップ1杯の水かぬるま湯で服むとされています。特に、錠剤やカプセル剤を就寝前に服用する時は、水なしで服むと薬が食道の途中に止まり、その周囲に炎症を起こすことがあります。また、水以外のもので服むのも要注意です。例えば、牛乳と同時に服用すると吸収が悪くなる薬があります。逆に、胃腸障害を起こす薬の場合は、前もって牛乳を飲むことが望ましいとされています。
 一方、最近では水なしでもラムネ菓子のように口の中で溶けるように作られている、口腔(こうくう)崩壊錠という錠剤も多く開発されています。喋下(えんげ)障害のある高齢者や水分制限のある人、入れ歯で顆粒剤が口の中に残ってしまって都合が悪いという人に適しています。また、外出中ですぐに水が手に入らない状態でも大丈夫です。薬剤の名前の最後に「−D」とか、「−OD」がついていることが多いようです。


『お薬手帳』をご存知ですか?
『お薬手帳』は健康管理記録にも。


 ある医療機関で行なったアンケートによると、薬を服用している人の約2割が、自分に処方されている全ての薬の使用日的を理解していないという調査結果が得られました。
 最近は、昔のように「かかりつけのお医者さん」を持つ人が少なくなりました。症状に応じていくつかの病院にかかり、色々な薬をもらいます。1カ所で処方される薬が少量でも、2〜3カ所通院すれば、簡単に10種類くらいの薬を手にすることも珍しくありません。
 このように、複数の薬を併用することは一般的ではありますが、これが時に非常に危険なことになりかねません。薬の組み合わせによっては、体内濃度が非常に大きくなつたり、逆に効き目がなくなることがあります。薬の数が多くなると自己管理も大変です。
 そこで、皆さんは『お菜手帳』をご存知ですか? 『お薬手帳』は、調剤薬局など医療機関に行けばどこでももらうことができます。
 そこに、いま服用している薬の内容、かかっている医療機関名、薬の処方日などの内容を、数十円の実費(保険適用)で薬剤師さんに記入、確認してもらえます。
 ただし、75歳以上の人は、後期高齢者医療制度の施行によって薬歴管理が義務付けられていますから、『お菜手帳』は必ずお持ちのはずです。これによって、薬の服み合わせや副作用を防ぐことができます。
 また、病院で行なった検査結果なども自分で記入することができますから、健康管理記録にもなります。さらに、旅行に出かけた時に体調が悪くなつて診療を受けた際も、これを見せれば、今までの状態や服薬している薬が分かるため、適切な薬を処方されることになります。
「クスリ」は、反対から読むと「リスク」です。英語で「リスク」とは、「危険」という意味です。薬は、まさしくこの読み通りで、病気を治すという正しい作用(主作用)もあれば、その反対に必ず悪い作用(副作用)もあります。やっかいなことに、主作用(薬の効果) が強ければ強いほど、副作用も強くなります。
 非常に効き目が鋭くなった最近の薬は、服み方を違(たが)えると容易に大きな「リスク」に変身します。薬を安全に、その主作用を最大限に引き出すためには、薬を正しく理解し、正しい時に、正しい量の服用を守ることが肝心です。
 高齢化社会を迎えた今日では、医療は長期慢性型へと移行しており、患者はより以上、薬の服用目的や使用上の注意事項・副作用などの医薬品情報をよく理解した上で、長期にわたった適切な服薬を続ける必要が出てきています。
 今一度、自分が服んでいる全ての薬がどういうものであるかを正しく理解し、正しい時に、正しい量の服用を守ってください。そして、いつも『お薬手帳』の携帯をお忘れなく。