診療室から Vol.06 緑内障
緑内障は早期発見 早期治療が重要
傷ついた網膜神経の修復は不可能なため
狭くなった視野や視力の回復は困難。


 今回は緑内障について説明しましょう。
 緑内障は、見える範囲(視野)が徐々に狭くなり、そして紙筒を通して見るような状態になる病気の総称で、数種類に分類されています。進行すると視力が悪くなり、治療しないと最後には失明することもあるという重い病気です。
 原因は、目の形を保つ内圧(眼圧)が通常より高くなり、網膜(フィルム)が圧迫されることにより障害を受け、見える範囲(視野)が狭くなります。         
 眼球の中には水(房水(ぼうすい))の部分があります。この房水は、目の茶目(虹彩(こうさい))の裏側にある毛様体色素上皮と呼ばれるところで作られ、眼球を満たす細胞外液です。
 房水はピントをつかさどる水晶体(レンズ)を潤し、虹彩の裏側から瞳孔(どうこう)を通り、透明の角膜に裏側から栄養を補給します。その後、老廃物を受け取り、茶目と白目の境目にある隅角(ぐうかく)と呼ばれる出口から眼球の外に出ていきます。また房水には目の形を保ち、張りや固さを調節する働きもあります。
 ところが、その眼内の房水が何かの原因で作られ過ぎたり、もしくは出口が目詰まりすると、水の出入りのバランスが崩れ、眼圧が上がり諸症状をきたします。
 また、目の底にはフィルム(網膜) があります。フィルムはデジタルカメラの画素子のようになつていて、光や、三原色(赤・青・黄)を感じる細胞がたくさんあります。
 その画素子からは神経線維(電線)が出ています。それが視神経乳頭に集まって、向きを変え垂直の束となり、脳のほうに視神経となって情報を伝えるという仕組みになっています。
まるでグラスファイバーの束の飾りのようです。
 では、眼圧が上がるとなぜ悪いのでしょうか? 眼圧が高くなると目の底が圧迫されます。
すると、網膜の神経線椎が圧迫され、ちょうど、正座をしていて足が痺れるように神経が麻痺(まひ)します。
 長い時間その状態が続くと、櫛(くし)の歯が欠けるように神経線椎が傷んでいきます。長い神経線椎や、圧迫に弱い場所にある線椎がまず傷害され、視野が欠けることになります。
 視神経乳頭は、神経線椎が集まり垂直に向きが変わって眼の外に出ていきます。爪楊枝(つまようじ)の束を押さえると少しの力でへこむように、力に対してへこみが出ます。そのためにグラスファイバーの曲がりが強くなるように、神経が折れて傷んでいきます。また血流も悪くなり、それらのことが相まって視野欠損が生じます。
 フィルムの網膜は光を受けて、その像を解析して脳に送るため、他の神経と違って神経細胞や線椎が髄鞘(ずいしょう)で保護されていません。肘(ひじ)を打って痺れが続く所があるように、他の神経に比べてより障害されやすいのです。網膜神経は脳の神経と同じで、一度傷んでしまうと回復しないと言われています。


緑内障の特徴は、多くの人の場合で
自覚症状がなくゆっくりと進行すること。


 緑内障の種類は大きく分けると、房水の出口の目詰まりによる「開放隅角緑内障」と、虹彩による房水の出口の閉塞(へいそく)による「閉塞隅角緑内障」の二つがあり、そのそれぞれに原発性と続発性があります。
 そのほか、先天性や外傷性のものもあります。糖尿病やリウマチなどの全身疾患や、薬や他の目の病気によって引き起こされる緑内障もあります。
 さらに最近の調査では、眼圧が正常であるにもかかわらず緑内障の症状が出る、「正常眼圧緑内障」があります。その罹患(りかん)者は、40止成以上では、年齢の十の位の10%、つまり40歳代で4%、50歳代で5%、60歳代で6%……に認められると言われています。
 また、愛知県のある市の全市民を対象とした調査で、日本人に意外と多いということが分かりました。
 これらの病気は急性を除き、非常にゆっくりと進行するので、初期段階は自覚症状がなく、健診時や眼鏡処方時に見つかるケースがよくあります。


緑内障、その可能性ありと診断されたら
年単位の進行を自覚し、7カ条の厳守を。


 急性閉塞隅角症のように、急激に進行するタイプの緑内障は、霧視、充血、眼痛、頭痛、吐き気などの症状を示します。
 これを放置すると数日で失明に至りますので、すぐに眼科医へ行くことが大切です。
 慢性のタイプは前記の症状のごく軽い症状と、電灯に虹(にじ)がかかる、下を向いてする仕事(読書も)をすると疲れる、肩が凝る、頭が痛くなる、電灯の紐(ひも)が見えない時があるなどの症状で、特徴的な症状はありません。
 しかし、診断してから詳しく聞くと、「何かおかしいと思っていたが老眼だと思っていた」などと答える患者さんもおられます。ですから、自分で判断をせず、40歳を過ぎたら、年に1回くらいは眼科医で診てもらうことをお勧めいたします。
 また、緑内障の遺伝関係ははっきりとは判っていませんが、この病気になる人が多くいる家系があります。家族に緑内障になつた人がいるなど、思い当たる方は定期的に受診されたほうがよいでしょう。
 緑内障になる可能性があると診断されたり、眼圧が高く、また症状がある場合は、眼圧を下げるために、点眼薬や内服薬が処方されます。また、そのほかの治療としては、予防目的で房水の新しい出口を作るためのレーザー治療があります。その際は、入院して手術を併せて行ないます。
 重ねて言いますが、この病気の進行は年単位です。緑内障と診断された時には次のような点に注意して下さい。
@眼科医とよく連絡を取って、長期計画で治療すること。
A調子が良くても、年に何回かは受診すること。
H眼痛、充血、霧視、視力低下を自覚した時は、眼科専門医を速やかに訪れること。
C水分(コーヒー、ビール)を一時に大量に摂(と)らないこと。
D規則正しい生活(十分な睡眠を取る)をすること。
E精神的なストレスが症状を悪化させるので、心の安定を保つこと。
F転居などで医者を替える時は、眼圧や視野などのデータをもらうこと。