診療室から Vol.02 赤ちゃんとタバコ
若い女性の喫煙は一生の後悔の基です
乳幼児のタバコの誤飲は
年間約6000件にも


 今回はタバコと赤ちゃんについてです。
「妊娠おめでとう」。待望の赤ちゃんが授かった喜びも、お母さんが喫煙者だとしたら、おなかの赤ちゃんに色々と悪影響があります。
 例えば、不幸にも出生前後に亡くなる赤ちゃんの割合は、タバコを吸わないお母さんから産まれる赤ちゃんより多くなります。その上、生まれても低体重児となる場合があります。また、母乳の分泌量や栄養分である脂肪分が、非喫煙のお母さんの母乳より少ないと言われています。
 元気な赤ちゃんが突然死亡するという「突然死症候群」の母親には、喫煙者が多いという報告もあります。さらに、気管支炎や喘息(ぜんそく)など、呼吸器系の病気にかかる赤ちゃんも多くなります。
 お母さんが吸う場合だけではなく、横でタバコを吸うお父さんの煙を、お母さんや赤ちゃんが間接的に吸う間接喫煙も同様です。
 赤ちゃんがもう少し大きくなっても、タバコの恐怖はまだまだ続きます。
 ハイハイをし始め、生後7〜8カ月頃になると、赤ちゃんは、自分の口の中に色々な物を入れてそれを確認しようとします。そこでこの時期になると、タバコや吸い殻を口に入れるという事故がよく起こります。
 幼児のニコチンの致死量は10から20ミリグラムですので、1本で十分な量になります。2センチのタバコで中毒症状がでます。ですから、手の届く所には、タバコはもちろん、灰皿も絶対に置かないで下さい。
 時々、ジュースやコーヒーの空き缶を灰皿代わりにしている人を見かけますが、これを間違えて幼児が口にするのが最も危険です。タバコが液に溶けているのを飲むと、即死する危険性さえあると言われています。くれぐれも注意して下さい。
 日本では、生活の中心が畳や床などに直接座ることが多く、低い位置に色々な物が置いてあります。低い位置にある物は、幼児が手の届く高さであるために、誤飲の発生率は、先進国中では異常に高いと報告されています。
 日本中毒情報センターの受診報告を見ると、毎年3万5000〜4万件の問い合わせがあり、その約8割を0歳から4歳までの幼児が占めています。また、1歳未満の問い合わせは1万件前後あります。
 タバコについての問い合わせは、乳幼児全体の16から17パーセントで、年間約6000件あり、最も多いと言われています。
 このような報告から、喫煙者のマナーの向上、幼児のそばではタバコを吸わない、灰皿や灰皿代わりになる物を置かない、幼児から目を離さないことがとても大切なことだと言えます。
 ですので、赤ちゃんが5カ月を過ぎたら、1メートル以下の手の届く所には、タバコの他にも、3センチ以下の大きさの物や、化粧品、殺虫剤、石けんなどの危険な物は置かないようにしましょう。
 もし、子供がタバコを誤嚥(ごえん)したり、口の周りについていたりして誤嚥の可能性がある時には、すぐに病院に連れて行って下さい。またその時には、食べた可能性があるタバコがあれば、持参して下さい。病院では、状態を観察した上で、胃洗浄を行なう場合もあります。


平気で、くわえタバコをしながら授乳する母親の無知さに愕然

 さて、我が国の成人男性の喫煙率は低下傾向にあるとは言え、先進国の中ではいまだに高いと言われています。また、女性の場合は、喫煙率そのものは比較的低いのですが、最近では徐々に増加しています。特に20代から30代の若い女性の喫煙率が大幅に増加していると言われています。
 また大学生の場合、女子大と男女共学の大学では、女子大のほうが、喫煙率が高いという結果も出ています。
 女性にとっては、この20歳代から30歳代の時期は、妊娠、出産、子育ての大事な時期で
もあります。大学時代やOL時代に喫煙の習慣が身についてしまい、いざ結婚、妊娠してもやめられないという女性が多いと聞きます。
 女性は、将来お母さんになる大切な身体なのですから、くれぐれもタバコには手を出さないように気をつけてほしいと思います。一生の後悔の基になります。
 育児相談会の時などに、赤ちゃんを抱きながら (ひどい場合は授乳しながら)平気で吸っているお母さんを見かけます。そこで「タバコは赤ちゃんにこういう害がありますよ」と話しますと、「そのようなことは知らなかった」と言うお母さんがいるのには驚きます。
 悪い影響があることを分かった上で吸っているのだろうと思うのは間違いのようです。意外とタバコの子供に対する吾が、まだまだ知られていないのが現状ではないでしょうか。ですから、もっと若い女性にタバコの害について教えてあげることができればと思います。
 最近では、職場や病院、公共の施設、列車などでは禁煙や分煙が進んできています。またテレビでも、タバコの宣伝はなくなりました。生命保険も喫煙者と非喫煙者では、掛け金に差があるというように変わってきています。しかし、依然としてタバコは大きな産業であることは間違いありません。
 これからは、自分の家から、また家の周りから喫煙者を一人でもなくし、子供達にタバコの恐ろしさを、家庭や学校で教え、より健康な生活が送れるような社会になればと、願っています。
 最後に、子供が何か(タバコや化粧品、洗剤など中毒を起こすような物)を飲み込んだ時には、まず落ち着くことです。そして、何を何時、どれくらいの量を飲んだかを、日本中毒情報センター(中毒110番)に電話をして、どうすればよいかを聞くのも一つの方法です。
 また、すでにいつもとは様子が違うなど、中毒症状が現われている場合は、すぐに医療機関に相談するようにしましょう。