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一度は登りたい「富士山」

登山者32万人に再来した富士山ブームを見る
今年は富士山への登山者数が、過去最高を記録した。
そのブームの陰には、富士山に携わる人達の努力があった。

 「日本一の山」の 「ゴミだらけ」からの復活  

 富士山には今も昔も多くの人が登っているが、ここ数年の富士登山者は特に多い。平成17年に20万人程度だった登山者が平成20年には30万人を超し、平成21年は29万人強と登山者数を落とすものの、平成22年、今年の登山者数は約32万1千人となっている。これだけ多くの人が富士山に登るようになった要因を考えてみたい。
 「日本一の山は?」と聞かれたら、日本人であるならば、おそらく十中八九「富士山です」と答えるだろう。日本一の高さでありながら、その美しい姿は、見る者を大らかな気持にさせてくれる。古くからうたや絵画の題材となり、日本人の生活、文化に密着してきた山である。
 『世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約』に日本が批准した平成4年当時から、富士山を世界遺産にという声は強く、平成6年には240万人分もの署名が集まり、国会に請願された。しかし翌年に開催された富士山国際フォーラムで、ユネスコ世界遺産センターの関係者から「富士山の世界遺産化については環境保全の対策に問題がある」との指摘があり、結果的に富士山を世界遺産にする旨の政府推薦はなされなかった。当時のCMに「富士山はゴミだらけです」という文言があったほど、富士山の環境は劣悪だったのである。  
 行政側も富士山の環境改善に取り組み始め、平成8年には大胆にも「屎尿持ち帰り運動」を開始した。つまり「自分の糞尿は、携帯トイレで自宅に持ち帰ろう」という運動だが、これを登山者に義務付けると観光客が激減するからという理由で中止になったそうである。  
 ちなみに米国では、グランドキャニオンのコロラド川へ立ち入る場合は携帯トイレの持参が義務付けられているという。  
 登山者に携帯トイレの持参義務付けを中止したことから、平成16年になって「環境に配慮したトイレ」が富士山に配備され始めた。2年後には富士山にある全ての山小屋に配備され、富士山の衛生環境は以前のように、登山シーズン中に溜め込んだ屎尿や、トイレットペーパーをシーズン後に放流し、それが分解されずに残る「白い川」もなくなり、同時に悪臭も消え、飛躍的に向上した。富士山のトイレ利用には一回につき200円必要だが、そのお金はトイレの維持管理に使われている。  
 しかしながら、登山客数が多い、あるいはトイレの故障という理由により、トイレの汚水を平成16年から21年まで富士山に撒き散らしていた山小屋もある。登山道から異臭がしなくなっても、まだまだ衛生的には世界遺産のレベルに達していないと考えられる。
 「衛生」繋がりで余計な話をさせてもらうと、富士山で暮らしているか、または山小屋で働いている人達は、水が大変貴重であるため、入浴できるのは1週間に1回ということだ。  
 環境問題さえ解決すれば、世界遺産への登録はなされるのだと考える人もいるだろう。実際富士山のゴミを拾い集めるボランティア団体、NPO法人、地元観光協会も出てきているが、話はそれほど簡単ではない。世界を見渡すと、富士山のような円錐型の火山は珍しくないし、麓まで含めて考えた場合に、すでにあまりにも開発されすぎていることや、世界遺産登録後に義務付けられる自然保全のための管理の困難さなど、問題が山積しているからだ。


宿泊環境の充実が 富士山ツアーの増加を呼んだ  

 さて、登山者数については前述したが、ここまで多くの人が集まる要因としては、富士山ツアーが多くなったことが考えられる。富士山に登るのが初めての方でも安心できるように、添乗員も一緒に登るということだ。また、八合目の山小屋で宿泊できるということも人気の理由であろう。  
 ツアーが組まれるようになるまでの人気となった要因として考えられるのは、各山小屋が「山小屋での快適登山の活動定着」として女性専用の着替えスペースの新設など、宿泊環境が充実したことなどが挙げられる。平成17年を各山小屋が「改革元年」と定め、サービスの向上、また先に述べた「環境に配慮したトイレ」など、環境問題への配慮等を新たな取り組みとして展開したことから注目を集め、登山者数が増えている。  
 次に、外国人登山者が多くなったことが挙げられる。今、各旅行会社は日本人向けだけではなく、外国人向けの富士登山ツアーも組んでいる。  
 富士山は間違いなく日本一の山であり、外国の方からすれば、日本に来たら一度はその山に登りたいという思いもあるだろう。外国の方からすればツアーの団体の中にいれば、富士山の説明を聞けて、自分で山小屋の予約などをすることもなく、周りのツアー客と一緒に安心して日本一の山に登れる。このお得感が、全登山客数の3割を占めるという外国人登山者の増加に繋がっているのではないだろうか。


団塊の世代を中心とした 中高年に人気の富士登山  

 また、団塊の世代が大量に定年退職をしたことも挙げられる。一口に団塊の世代と言っても、その人数はおよそ680万人で、一説には800万人とも言われている。流行に流されやすいことは日本人の特徴で、団塊の世代の僅か数パーセントが登山しただけでも、メディアがはやし立て、中高年を中心として、富士登山に拍車がかかっていると考えられる。  
 さらに、ETCの休日割引の導入により、自家用車を利用して、五合目まで行く人の割合が増えた点も考えられる。富士山は年々環境が整備され、登山者にとって更に登りやすい山となっている。  
 しかしいくら富士山の登山環境が向上したといっても、さすがに手ぶらで登山に挑むと、山開き直後の7月2日にスニーカー、Tシャツなどの普段着で登山したパチンコ店員の男性のように「一人で富士山に登ったがライトを持っておらず、暗くて道がわからない。怖いので助けてほしい」と119番をする羽目になるので、最低限の登山用具は揃えなければならない。  
 富士山に登りたいと思う人は、「記念だから」、「御来光を見るため」、「パワースポットだから」とそれぞれの思いつきがきっかけとなって、長い坂道を頂上目指して歩き出す。  
 登山者各自のきっかけは目に見えないが、これまで挙げてきたように最近の富士山は、環境面や交通面において、登山者がより快適に登山を楽しめるように環境が向上してきている。  
 そして団塊世代の退職、中国人の来日者数の増加といったここ最近の時流にも乗り、富士山登山をツアーに取り入れる旅行会社が増えた。  これらの点は、目に見えて富士山への登山者が増えた要因と言える。


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